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研究基盤と準備状況

「実施体制と役割分担」へ

1:薬剤耐性菌研究

2:食の安全に関する研究

3:人類学・開発学に関する研究

4:相手国研究機関

1)これまでの進捗状況

暫定研究期間中に実施を予定していた5つの地域モジュールの事前調査と調整、基幹病院の選定と協力体制の構築に関しては、H23年6月~8月の間に実施された計7次にわたる専門家派遣により行いました。調査地域の視察とそれぞれの地域モジュールを管轄する国立栄養院、タイビン医科大学、ナチャン・パスツール院、ホーチミン国立保健医療院、カントー大学ならびにビンデイエン卸売市場の担当者(申請書記載相手国研究機関研究者)と個別協議を行い、さらに調査実施地区の確認と現地視察によるフィールド調査を行いました。調査研究方法(検体収集ならびに処理方法等)においても協議を行い、提案書通り実施することを確認しました。研究計画本格運用後の詳細日程については、開始早々(H24年4月第1週目)に細部を詰め実施することとしました。 

H23年8月に、JICA調査団による国立栄養院に設置する共同研究ラボの設置区域確認とベトナム側全参加機関との合同協議を行い、RD締結に向けたMMの締結をベトナム側研究代表機関である国立栄養院との間で行いました。 

RD締結の前提条件となる供与機器設置に必要な国立栄養院専用実験室(ラボ)改装費用は、ベトナム側が負担しそれを確保する旨を明記した書面を国立栄養院より12月に受領しました。また、本研究の実施に必要な倫理委員会の承認は、国立栄養院ならびに大阪大学からそれぞれ12月と10月に得ました。 

研究開始に備え、ベトナム側専門家育成のためのプログラムをベトナム側と協議し、H24年度に長期研修として大学院博士後期課程に1名を、短期研修として8名の研修員をベトナム側各参加機関から日本に招へいすることとなりました。

日本側では、以下のような研究機関に役割を分担し、研究を進めます。

1:薬剤耐性菌研究

  研究機関名・研究代表者名:大阪大学グローバルコラボレーションセンター・山本容正

  研究題目:薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発

2:食の安全に関する研究

  研究機関名・主たる共同研究者名:大阪府立公衆衛生研究所・久米田裕子

  研究題目:食品管理における耐性菌検出とそのモニタリングシステムの開発

3:人類学・開発学に関する研究

  研究機関名・主たる共同研究者名:大阪府立大学大学院生命環境科学研究科感染症制御学領域・山崎伸二

  研究題目:薬剤耐性細菌保菌状態の安定性とそれに及ぼす因子解析研究

4:相手国研究機関

2)相手国研究機関との準備状況

相手国研究機関であるベトナム国立栄養院は1980年に設立された、栄養学および食品衛生学分野の研究においてベトナム全国の研究を統括する立場にある機関であり、両分野を対象とする全国栄養調査を5 年に1 度実施しています。同院には食品安全衛生課とベトナム北部を管轄する食品検査センターがあり、それぞれ研究と実践を担っています。本研究構想の実施のために必要な基本的な機器と人員は存在するが、研究を遂行するためにはより高度な分析ラボを設置する必要があります。

相手国研究機関の選定理由は、以下の通りです。

① 国立栄養院の「食が人間の健康に与える影響に関する研究」というミッションは、本研究構想の「食材に関連した蓄水産の生産から消費に至る諸過程における耐性菌発生とその拡散」という第一の探求課題に合致し、また、同院がこの点においてベトナムにおけ るトップの研究機関であり、全国を統括する機関であります。

② 本研究構想は、社会実装とその持続的な維持発展を視野に入れたものであり、ベトナム政府の行政的な方針とのすり合わせが不可欠です。この点で、政府の管轄機関である食品安全管理局と国立栄養院は共に保健省に所属する機関として、行政と研究の面で表裏一体の関係にあり、現実に、本研究構想はこの2つの組織との調整を通して構築されてきました。

③ 国立栄養院は、研究だけでなく、実践(政策提言)、養成の機能を有する中央の機関であることから、本研究構想において構築されたデータベースを持続的に運用し、構築さ れたモニタリングシステムモデルの運用をチェックし、さらに、レベルアップの図られたインフラと人材の能力を教育を通して、ベトナム全土に敷衍していくのにふさわしい機関です。

④ 国立栄養院は、本研究構想に参加するベトナム側協力機関に対して、食品に関する事業 ではこれを統括する立場にあり、日常的にこれらの機関と協力関係を構築しており、本研究構想を実現するのに十分な研究ネットワークをマネジメントする能力を有することです。また、本研究構想において、実際に、ベトナム側協力機関は国立栄養院に対して研 究協力・補完関係を結ぶことについて内諾しています。

本研究構想に関する連絡は、2009 年末から始め、2010 年1 月、3 月、5 月、6 月、7 月、8 月、9 月に、日本側研究参加者のべ12 名が国立栄養院を訪問して、インフラの整備状況を調 査するとともに、意見交換を行って調整してきました。また、日本側研究参加者は、ベトナム側のすべての協力機関を訪問し、協力の内諾を得ました。さらに、本研究構想が、社会実装を志向する ものであることから、行政上の監督機関である保健省食品安全管理局とも連絡を行い、調整を 図りました。

一方、ベトナム側からは、2010 年8 月に国立栄養院および協力機関であるホーチミン市公衆衛生医療院から専門家を招 へいし、本研究構想に関する 研究会を行いました。また、2010 年10 月には、保健省副大臣 (公衆衛生担当)、食品安全管理局局長、国立栄養院院長、 タイビン医科大学副学長らに よる大阪大学訪問と、本研究 構想を含む種々の協力要請が 大阪大学になされました(写真参照)。

以上の準備を通して、国立栄養院側からは、共同研究のために必要なベトナム側の人件費などについて予算を獲得する旨、内諾を得ています。

大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)は、平成22 年8 月25 日に相手国研究機関である国立栄養院と学術交流協定(平成22 年9 月1 日発効)を締結しました。これに伴い、GLOCOL は国立栄養院内に共同オフィスを設置しました。また、同日に、GLOCOL、ベトナム国 立栄養院、上野製薬株式会社との間で、国際共同研究Research for Food Preservation, Food Hygiene and Related Factors in Vietnam (2010/9-2012/8)の契約を行い、現在、実施中です。このほかに、GLOCOL は、味の素「食と健康」国際協力プログラム(平成20 年度から平成 24 年度)、日本学術振興会論文博士取 得希望者に対する 支援事業(平成21 年度から23 年度)、 大阪大学大学院薬 学研究科と共同実 施している組織的 な大学院教育改革プログラム「健康環境リスクマネージメント専門家育成」(平成21 年度か ら23 年度)において、 国立栄養院と研究・教育・実践の面での協力関係にあります。(写真参照「本申請課題ベトナム側関係者と大阪大学との会談(H22 年10 月大阪)」)

3)倫理的配慮

本研究には、ヒトの糞便材料ならびにその提供者の問診によるアンケート成績の使用ならび に対象地域で罹患した患者材料から分離された臨床分離細菌株の疫学的分析研究を含むため、 疫学研究に関する倫理指針(文部科学省・厚生労働省)に準拠して実施します。具体的には、所属大学(大阪大学)ならびにベトナム保健省の倫理委員会での承認を得て実施します。

4)生物資源・知的財産等の取扱いについての検討状況

本研究の提案に対して、ベトナム保健省、国立栄養院が「国際共同研究に関する協定」の内容を確認し、契約締結・事業実施・事業終了後に研究成果・知的財産権の取扱い等について問題が発生しないこと及びJST/JICA が業務委託契約約款に基づいて指示する事項に当該機関 が従うことを確認しています。