活動成果

2018.09.10

活動成果

【報告】岡山大学 学生自主研修(フィリピン)

日程:
2018年8月26日~2018年9月1日

研修先:
フィリピン共和国、セブ市(University of San Carlos、Perpetual Succour Hospital、および市内薬局)

概要:
途上国での薬学教育および薬剤師業務の高度化に貢献できる、国際性に富んだ高度先導的薬剤師の養成を大きな目標として掲げ、フィリピン国内の薬学系大学の中でもトップレベルの薬学専門教育を実施しているUniversity of San Carlos(USC、岡山大学と大学間交流協定を締結済)を拠点とし、同市内の中核病院であるPerpetual Succour Hospital(PSH)、および市内薬局において実質5日間の研修を実施した。各研修参加学生にはUSC薬学科学生のバディが伴い、学内の講義・演習に共に参加することで、学生が直接的に同国の薬学教育を実体験した。PSHおよび市内薬局においては、現地薬剤師から直接説明を受けるとともに、施設内を見学し、日本国における実臨床との類似点および相違点を学んだ。最終日には研修参加学生による英語でのプレゼンテーションを実施した。
今回の訪問に際しては、本研修プログラムの精査および次年度以降の展開に関する協議を目的とし、本学学内経費を獲得し、教員1名を追加派遣した。また、大学間協定に基づく双方向的な研修の実施・継続のため、2018年10月にはUSCから6名(教員2名含む)を岡山大学に招聘し、本学および本学附属病院での薬学教育・臨床・研究の見学・参加、学生間交流を含む8日間の研修プログラムを実施し、本研修成果を活かし参加学生も積極的に受入プログラムに参加する計画である。

実施した感想:
USCは、薬剤師国家試験合格率が比国で1位であり、授業は全て英語で実施されている。ティーチングスキルの研修・審査を受けたLPT (Licensed Professional Teacher) の教員も多く、同校の薬学生は知識・技能の習得に常に積極的な姿勢が伺えた。本学学生がそれらを直接目にすることで大きな刺激を受け、またフィリピンの臨床現場を見学したことで、日本の技術・設備との相違を感じ取り、途上国に対し我々がどのように貢献できるかを考える上で大きな動機付けが図れた。今後も本研修プログラムを継続し、かつ研修プログラムの充実や研修期間の延長を図り、参加型研修に加えて我々の知識・技術の伝達も視野に入れた双方向的な学びを実施することで、本研修プログラムの目的である先導的な薬剤師の養成に繋げる。


参加学生の感想:
①授業聴講では先生と学生の意欲やエネルギーに圧倒された。高度な技術や知識の点では日本が勝っているかもしれないが、国の将来を担ってゆく若者たち、またその指導者の主体性や自主性は日本が多いに劣っていると感じた。高度先導的薬剤師に向け、自身に足りないものはこれであろう。
 フィリピンの薬学部は現在4年制であるが、国際化に向け5年制への移行を検討している。しかし5年制導入に向けての経済力、人材が不足しておりまだまだ多くの課題があるように思われた。もし日本の教育者をフィリピンに派遣することができれば、発展途上国のさらなる発展を支援することができるのではないかと考える。
 講義や授業の聴講、USCの教授方や学生との会話、またプレゼンテーション発表を通じ、自身の英語力は十分に近い状態であるが、知識が不足していると感じた。専門的な知識を身につけるべく、大学での学習にさらなる意欲がわいてきた。

②フィリピンでは薬学教育が4年間であること、日本のOSCEに当たる実技試験がないこと、製薬会社に勤めるにも薬剤師免許が要ること、授業の一環としてワインやせっけんを作ることなど、日本と異なる点がいくつもあった。授業の体験では、学生がとても積極的で、先生の問いかけに対し全員が口々に答えるなど、日本では見られない様子であった。研究室の見学をした際に見た実験機器は、日本で使っているものに比べるとかなり古く、十分とは思えなかったが、学生の意欲は日本の学生のものより高いと感じた。フィリピンの学生から刺激を受け、今後の学習への意欲を高めるよい機会になったと思う。

③USCの学生の勉学に対する熱意に大変感動した。実験機器や内容はやはり日本より遅れているが、学生達の熱意は日本よりも高く、授業への参加度も非常に高かった。先生に対する質問に対し、生徒が次々に自分の考えを出していく様子は大変印象深かった。特にプレゼンテーション力が高く、発表者は原稿内容を読むのではなく、自分の考えとして他者に分かりやすく伝え、聴衆を引き込む点が日本の学生とは大きく違っていた。薬学面でも多くの相違点があり、最も衝撃的だったのがフィリピンでは製薬会社で働くうえで薬剤師免許が必要である点である。フィリピンでは創薬学科がなく4年間の薬学科のみであった。国際化に伴い5年制への変更案も出されたが、財政などの面からまだ見送られている。発展途上であり、日本とは全く異なる問題を抱えるフィリピンであるが、互いに参考にし合うべき点が多くあると思う。

④今回の研修を通じて、国の発展度合いや国内の貧困の差によって克服すべき医療問題が異なることを肌で実感しました。
具体的な例としては、フィリピンではワクチンを皆が平等に打つことが出来ない、劣悪な衛生環境などの理由でB型肝炎や狂犬病が大きな問題であることです。授業でB型肝炎や狂犬病にかかった患者の反応や薬剤師がすべき対応について考察する場面がありましたが、日本ではほとんどお目にかからない疾患なので症状もあまり分からず困惑しました。
一方で、これからの薬剤師が求められること、薬剤師の職能拡大に関する考え方は日本と共通でした。日本よりも発展途上の部分も多い国でもこれからの薬剤師が求められることが同じだと知り、今後の薬学生・薬剤師生活における大きな学びとなりました。
また、フィリピンの薬学教育での一番の問題点として、優秀な薬剤師を輩出しようと教育に力を入れても優秀な人材は国外へ出てしまう、ということを学びました。
 研修を終えて、フィリピンのような途上国での薬学教育や病院薬剤師業務の高度化に貢献するために自分が出来ることは、まず英語力を磨くこと、そして今回のような研修プログラムや国際学会などで、各国の薬学生・薬剤師と情報交換をすることでお互いを高め合うことなのではないかと思い、意識的に行動していきたいと考えています。

⑤一番感じたのは、薬剤師の役割の違いです。日本では、患者さんに正しいお薬を渡すというのは基本ですが、それに加え、医師から出されている薬の量や種類が適切かどうか確認するという役割が監査という仕事の中にあるのに対して、フィリピンでは薬剤師は医師から出された薬を言われた通りに出すというところが違うと感じました。また、実際に病棟で薬剤師が働いているところを見たわけではなく、話を聞いた感じだと日本ほど病棟には薬剤師が上がっておらず、主に調剤、製剤に薬剤師を使っている印象を受けました。
さらに、初回面談時のアンケートや薬歴もあまりとっていないということに日本で薬学を学んできた自分は驚きました。
フィリピンの学生はとても積極的で、日本とは全く違う感じで衝撃を受けました。

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フィリピンおける薬学教育システムの紹介(左上:学部長).JPG

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USCでの講義への参加(右上:本学学生).JPG