活動成果

2026.03.18

活動成果

【報告】静岡県立大学・徳島大学 共催 臨床研究実施能力醸成に向けた教育手法開発についてのワークショップ

【日 程】静岡県立大学 2026年1月8日(木)~9日(金)
     徳島大学   2026年1月13日(火)~14日(水)
【研修先】静岡県立大学 徳島大学
【参加者】静岡県立大学 教員5名、学生11名
     徳島大学   教員4名、学生34名


【プログラム研修の概要】
本プログラムでは、米国アリゾナ大学から教員1名(Dr. Michael Katz)を招聘し、臨床教育に関する演習科目(市中肺炎に関する症例検討)を実施することで、学生の臨床能力とそれを基盤とした臨床研究能力の醸成を図った。また、参加教員は授業見学及びファシリテートを介して、米国薬学部で実施されている体系化された教育手法の習得と教育プログラムの導入推進を図った。
静岡県立大学、徳島大学の両会場ともに1日目は、Dr. Katzによる基調講義、" PATIENT ASSESSMENT : IMPROVING PATIENT OUTCOMES " から開始となった。さらに" COMMUNITY-ACQUIRED PNEUMONIA (CAP) "についての講義を行ったのちに、学生は小グループに分かれ、提示された市中肺炎症例に対する薬物療法について討議し、プロダクトの作成を行った。静岡県立大学では、教員(実務家)がチューターとしてグループ討議に加わるとともに、英語教員も参加した。徳島大学では学生のみでグループ討議を進めた。両会場とも、学生は言語のハードルはあるものの、内容をよく理解し討論を進めることができた。また講師のDr. Katzは、頻回に各グループを回って的確にアドバイスを行っており、その教育手法は大変参考になった。2日目の午後は各グループのプロダクトについて発表を行い、学生は英語でプレゼンテーションした。

実施スケジュールは、両会場とも以下のとおりである。
<1日目 午前>
イントロダクション(趣旨説明)
基調講義 Dr. Michael Katz (University of Arizona)
<1日目 午後>
講義 Dr. Michael Katz
学生プロダクト作成 #1
学生プロダクト作成 #2

<2日目 午前>
学生プロダクト作成 #3
<2日目 午後>
学生発表(Comments by Dr. Katz)
参加者および見学者全員による討議:日本における臨床教育の在り方
閉会式

【実施した感想】
本プログラムにおいて、参加学生は市中肺炎症例についての症例検討を介して米国薬学部における臨床教育を直接体験し、臨床能力の醸成を図る貴重な経験を得ることができたと考えられる。今回参加した学生は実務実習受講前後の4、5年生であり、基本的な薬物療法の知識と症例検討のプロセスは習得しているため、本症例検討においても日米で考え方に大きな差はなく、ガイドライン等のエビデンスに基づき、科学的な視点から薬物療法の方針を決定していくことの重要性を改めて確認できたと思われる。一方で、各国間での医療制度等の違いによる治療方針のずれや、英語を介したコミュニケーションの難しさについて改めて認識し、グローバルな領域で活躍できる人材となるために必要な課題についても学ぶことができたと思われる。
また、本プログラムでは教員にとっても米国の教育手法について詳細に学ぶことができる貴重な機会となった。今回実施した症例検討は、既に我が国の薬学教育においても日常的に実施されているが、教員による介入のタイミングやその内容、全体運用について大変参考となった。症例検討は、薬物療法における問題点を科学的に明確化し、エビデンスに基づいて解決策を策定するため、そのプロセスは臨床研究能力の醸成においても必須である。本プログラムは、国公立大学薬学部卒業生に求められる臨床現場におけるエビデンス創出に深く寄与する内容であったと思われる。

【参加した感想】
・本ワークショップは、症例検討を用いた薬学教育の手法を実践的に検討することを目的として実施された。静岡会場では英語教員が参加したことにより、教育的な視点が加わり有益であった。また、各グループに教員が入りディスカッションを支援した点も効果的であった。さらに、すべてのグループを一つの部屋で実施したことにより、全体の進行管理や情報共有が行いやすかった。各班に大型モニターを配置したことも、資料の共有や議論の可視化の面で有効であったと考えられる。
一方、徳島会場ではグループごとに別室で実施し、各班に教員などのチューターを配置しない形式で行われたが、そのような環境においても学生は主体的にディスカッションを進めており、十分な議論が成立していた。また、徳島会場では1グループ約9名と比較的大人数のグループであったが、この人数規模の方が効率的かつ効果的に議論が進む可能性が示唆された。これは徳島の参加学生がすべて5年生であったことも影響している可能性がある。
教育法の開発という観点から見ると、本ワークショップは症例検討を用いた教育方法の一つのモデルを提示するものであった。多くの大学において症例検討型の教育はすでに導入されているが、その手法にはさまざまなバリエーションがあり、本プログラムはその選択肢を広げるという意味で有益であったと考えられる。
症例検討型教育の目的については、大きく二つの側面があると考えられる。一つは、薬物療法に関する知識を患者個々の状況に応じて応用する能力、すなわち個別最適化を行う能力の訓練である。もう一つは、薬物療法に関する知識の整理および定着を目的とするものである。今回の症例と質問の構成は、どちらかと言えば後者の「知識の定着」を目的とした教育内容であったと考えられる。一方、個別最適化の能力を養うことを目的とする場合には、より長い時間をかけた症例検討が必要になると考えられる。
教育カリキュラムとの関係で考えると、個別最適化能力の訓練を目的とする場合には、実務実習の直前または実習終了後に実施することが望ましい。一方、知識の定着を目的とする場合には、薬物療法学の講義内容と連動する時期に実施することで、より高い教育効果が期待される。
また、学生教育という観点では、知識の習得を主目的とする場合、日本語で実施する方が理解しやすく、PBL形式のディスカッションも進めやすいと考えられる。そのため、必ずしも英語で実施する必要はないと思われる。一方で、同じテーマを米国の学生も学習していることを学生が知ることは、学習意欲の向上という観点から一定の意義があると考えられる。
本プログラムは2日間という限られた日程で実施されたが、集中して取り組むことで一定の教育成果を得ることができたと考えられる。今後同様のプログラムを実施する場合には、各グループに担当教員(ファシリテーター)を配置することが望ましい。また、ワークショップ開始前に教員向けのファシリテーター研修を実施することも有効であると考えられる。将来的には、全国からファシリテーターとなる教員を募集し、事前研修を行った上で学生のSmall Group Discussion(SGD)を実施する形式とすることも一つの方法として検討できる。

・本ワークショップに参加し、学生と一緒に肺炎に関する講義や症例検討を行うことで多くのことを学ぶことが出来ました。最初の確認テストは、臨床実習を終えた学生(5年生)で、感染症の治療に関わった学生、感染症について学んだ学生であれば回答することが出来る内容だと感じました。しかし担当した班の5年生は、それほど感染症について臨床実習で学ぶことが出来ていないような印象でした。施設や出会う症例も様々なため臨床実習で学ぶことのできるよう内容には差があると思いますが、大学での講義や演習、臨床実習も含め感染症への関わりを考える必要があるように思いました。また薬学部4年生では少し難しいテスト内容(これまでの講義で学ぶ機会はないような気がします)だということ、今回の担当班には5年生が1名であったことも関係して、本グループにとって回答にとても苦労している印象でした。1班に5年生(臨床実習を終了した学生)は2名以上いる方が良いと感じました。テスト自体は学生の現時点での理解度を把握するための手段としてよいと思います、それに合わせた導入講義へつなげることで、学生はよりスムーズに症例検討に参加できると思いました。
また今回、担当班の学生の特徴でもあるが、4年生のほとんどが自分の意見を言わない学生であったため、グループディスカッションに苦労しました。5年生と協力しながら、何度も意見や疑問を聞こうと話をふりましたが、何も回答がないことが多かったです。そのため5年生の意見をまとめる形で討論を進めていくことになり、上手にグループ全体をコントロールしながらSGDを進めることが難しかったです。もう少し4年生には具体的に指示を出す必要があり、今回中心となっていた5年生と事前に打ち合わせをしておくことが出来ればグループでの議論を行うことが出来たかもしれないと思います。
今回のテーマであった感染症についての講義や症例検討の機会は少ないため県立大学の学生にとっては、とても良い機会だった思います。時間的に難しいですが、議論とスライド作成の時間がもう少しあると良いと思ました。またグループの人数はもう少し多くし、班全体の学生レベルはある程度均一にした方が全てのグループでSGDをスムーズに行うことができると思いました。
 英語での発表スライドや原稿を作り、英語で発表することは学生にとって良い経験だと思います。また短い時間ではありましたが、フィル先生にスライドや原稿の確認、アドバイスをいただけたことも貴重な時間だった思います。発表時には、日本での感染症治療に詳しい薬剤師が加わることで、より活発な議論が行えるような気がしました。また、もう少したくさんの臨床系の教員がSGDや発表会(せめて発表会)に参加できると会が盛り上がる気がします。

・今回、グループBのチューターとしてプログラムに参加した。グループの学生は5年生2名、4年生2名の計4名であった。症例について、ほとんどの学生が予習としてわからない単語や市中肺炎について調べていたため、議論はスムーズに始められていた。開始時テストは英語に苦戦するなかでも適宜調べながら回答を作成出来ていたが、ケイツ先生の資料をあまり活用出来ていない学生が多かった。途中でケイツ先生からアドバイスをいただいた後は積極的に資料を活用していた。チューターとしては、ケイツ先生の資料を理解し介入することが望ましかったと感じた。グループ内のディスカッションは日本語で行われていたため、症例の英語を理解した後は、活発なディスカッションが行われており、意欲的な態度が印象的であった。スライドの作成は全て英語で行ったが、翻訳ソフトやchatGPTなどのAIツールを効率的に使用して作成していた。ただ作成して完成ではなく、その文章について科学英語の教員が添削をしてくださったり、読み方や発音についてご指導くださったりと、学生の英語の勉強に対して非常に有意義な研修となったと思われる。
 また、発表会においても英語での質疑応答に学生が積極的に参加し、英語でコミュニケーションをとるスキルを養うことができ、非常に良い機会となったと考えられる。

・Interesting seminar.
The instructor was an engaging speaker and gave very empathetic feedback on students’ presentations.
The presentation topics seemed appropriate to the students’ knowledge level and the Japanese context.
The scale of the presentations seemed a little too broad for the small number of members in each group. Next time I think it may be better to have a smaller number of groups with a larger number of members, which would allow for more of the presentation points to be adequately covered.
Looking forward to next year’s seminar!

・本ワークショップを通じて、臨床教育における教育手法の工夫や、その設計について体系的に学ぶことができ、大変有意義な時間となりました。
特に、受講者の主体的な思考を引き出すための構成や、実際の臨床の場面を想定した具体的な事例提示は、理解を深めるうえで非常に効果的であると感じました。単なる知識提供にとどまらず、「どのように教えるか」「どのように学習者の行動変容につなげるか」という視点が随所に盛り込まれており、大いに参考になる内容でした。
特に、国際化への取組の一環として、科学英語を専門とする教員が参画されている点は、学生の学習意欲や将来的な視野の拡大にも繋がっているように感じました。国際交流を教育に効果的に取り込む一好例であり、多くの示唆を得ることができました。
参加されていた学生の皆さんが、課題全体に対して非常に主体的かつ真摯に取り組んでおられたことも強く印象に残りました。皆さんの参加への姿勢からも、本ワークショップの教育設計が学習者の動機付けを的確に引き出していることがうかがえるように思えました。
 また、アドバンスト実習への応用方法等のヒントも戴くことができ、感謝しております。貴重な機会をご提供いただき、本当にありがとうございました。

・今回のワークショップで自分にとって勉強になった事が3点あります。一つ目は初めて市中肺炎の症例について考えたことです。学校の講義では抗菌薬は抗菌薬の単元で習い、肺炎の病態や治療とセットで教わらなかったのでどの抗菌薬を使うのかなどは知りませんでした。そのため、市中肺炎の時にはどういった治療が行われるのか、より臨床的な観点から学習できてとても勉強になりました。その中でも印象的だったことは、原因菌の特定率が思っていたよりもとても低く、検査の結果からどのスペクトルの抗菌薬を用いるのかいろいろ考えることが多いことでした。それまでは検査をしてその菌に効く抗菌薬を処方すれば治ると思っていたので、実習に行く前に知れたのはよかったです二つ目は自分の英語力についてです。なかなかネイティブの英語を聞く機会がない中で、2日間たくさんの英語に触れることができたのはとても有意義でした。ただ、マイケルケーツ先生の講義では理解が追いつかないことも多く自分の英語力のなさと、これから英語の勉強もしなくてはいけない焦りを実感しました。特に、話す問うことに関しては、聞くや読む事より大きく遅れていると感じました。先輩方の中には決して難しい単語や文法は使っていないのに、先生とコミニュケーションを取れていて経験の差を感じました。自分も話す機会をより多くつくることで、そういった文を組み立てる英語脳を鍛えたいと思いました。そのためにまず、英語を話す機会があればためらわずに声をかけようと思います。三つ目は先輩方とグループディスカッションできたことです。今までは同学年としか行ってこなかったので、違う学年の人と話し合うのはとても新鮮で面白かったです。先輩方と話し合う上で、おいていかれないためにできるだけ発言したり、わからないことを躊躇わず聞いたり、普段よりもいろいろな事を考えました。そして先輩方はまとめるのがうまく、普段よりも早く話し合いが進んでいきました。そこも自分がこれから伸ばしていかなければならないことだと思いました。今回のワークショップはとても忙しいスケジュールでしたが、普段の授業や研究室では経験できないもので参加して良かったと思いました。

・今回、このようなプログラムに初めて参加しました。
普段臨床薬学演習などで行っているSGDと流れは同じでしたが、内容がすべて英語で、英語の医療用語もたくさん出てきたため非常に難しく感じました。また、市中肺炎についても授業でもあまり習っておらず、あまりなじみがなかったため、難しかったです。
しかし、ネイティブの先生に直接教わることができ、パワポのまとめ方なども細かく指導していただくことができたため、非常に勉強になりました。
今回のプログラムを通して、英語を学ぶ必要性についても改めて気づくことができ、非常にいい機会担ったと思います。

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