
活動成果
2026.03.04
活動成果
【報告】 長崎大学 ニューメキシコ大学短期研修プログラム
【日程】 2026年2月13日(金)~2月22日(日)
【研修先】アメリカ合衆国ニューメキシコ州 ニューメキシコ大学(The University of New Mexico, UNM)
【プログラム・研修等の内容】
本プログラムは
(1)海外での臨床薬剤師の活躍を見学し、日本との差異を体験することで、高度先導的薬剤師の養成に資すること、(2)英語によるコミュニケーション能力、異文化に基づく研究・教育の多様性を理解する能力、自ら進んで討議に取り組む主体的な態度などを身に着けることにより、総合的で実践的な英語能力を養うことを目的としている。今回で6回目の実施となる。研修では、ニューメキシコ大学薬学部の講義の聴講や演習への参加、薬剤師およびPharmacist Clinicianの役割に関する講義の聴講、ペインセンターでのPharmacist Clinicianの業務見学、UNM病院薬剤部見学、薬局見学、双方向の研究紹介、Project ECHO(多職種協働オンラインカンファ)への参加、A-Fib screening eventの体験、キャンパスツアーを行った。
【実施した感想】
参加学生は、薬学部授業への参加、病院・薬局の見学を通じて、日米の薬学教育や薬剤師の職能の差異を体験し、ニューメキシコ州における地域特性や保険制度などの医療事情を背景とした薬剤師の役割を十分に学んだ。今回初めてニューメキシコ大学の薬学学生が定期的に開催しているアメリカ薬剤師会の会合へ参加する機会もいただいた。現地学生の活発な活動に刺激を受けながら、交流を深めることに努めていた。
今回私は薬学部教員の立場で、授業や演習および薬剤師やPharmacist Clinicianの仕事を実際に見学させていただいた。医療制度や保険制度、極度の医師不足といった社会的背景が、日本とは異なる薬剤師の役割・職能および専門性の発展に深く影響していることを実感した。授業では、反転学習やグループディスカッション等の主体的学修を促す教育手法が効果的に実践されていた。今回の研修は今後の日本の薬剤師の在り方や薬学教育の方向性を考える重要な機会となった。
【参加した感想】
➀この研修を通して感じたのは、ニューメキシコの薬剤師と日本の薬剤師で異なる点もあれば、共通して同じような問題を抱えている点もあるということである。もちろん処方権やワクチン接種などの権限をもっているニューメキシコの薬剤師は、より広範囲な業務内容で地域の医療に貢献しており住民からの信頼も厚い。さらに薬剤師としてより臨床で活躍したいと思ったとき、pharmacistだけでなくpharmacist clinician としてより自分の薬学的スキルを活かして患者の治療によりダイレクトに貢献できる選択肢があるのはとても魅力的だ。今回訪れたPain Centerのような場所では疼痛コントロールで専門性を磨くこともできる。コミュニティの薬局で働くことを選択した後も、compoundで専門性を磨いたり、ワクチン接種や一部認められた処方権などを用いて特色のある薬局を持ち患者に医療を提供したりすることができる。薬剤師として権限が広いことが、薬剤師の専門性そして提供できる医療の幅を拡大させていると感じた。
その反面、医療従事者間の連携でもどかしさを感じる点、調剤を主とした対物業務からコンサルテーションなどの薬剤師にしかできない対人業務にシフトしていくことが求められている点は類似していた。薬局と病院間で円滑に患者の情報が共有できるようになることは日本でもアメリカでも解決が必要な課題と感じた。また薬剤師ならではのスキルを活かした対人業務を増やすことで、医療や社会での薬剤師の存在感を高めていきたい、そして利益を確保していきたいといった傾向は類似していた。
今回の研修を通して、違いを知り良い点を取り入れられないかを模索することはもちろん、世界で同じ時代に同じ分野で働いているため共通している悩みも多くお互いどのように乗り越えていくのかを学びあうことが大切と感じた。
➁今回のニューメキシコ大学における短期研修は、米国の薬学教育制度と医療体制を学ぶとともに、地域特性が医療に与える影響を考察する貴重な機会となった。
本研修における私の目標は、「日米の薬学教育システムの相違点とその利点・課題を明らかにし、日本の薬学教育に導入可能な要素を検討すること」であった。
米国の薬学教育はDoctor of Pharmacy課程を基盤とし、臨床実践能力の育成を主軸に構成されている。特に印象的であったのは、実務実習時間の長さである。3年次に約320時間、4年次に約1440時間と、日本と比較して大幅に多い。早期から継続的に臨床現場に関与することで、卒業時には即戦力として機能することを前提とした教育体系が確立されていた。
また、多職種連携教育が体系的に組み込まれており、症例検討を通じて各専門職の視点を理解する機会が豊富に設けられていた。薬剤師は調剤専門職ではなく、治療方針決定に積極的に関与する医療専門職として位置づけられていることを強く実感した。
Pain Centerの見学では、薬剤師であり、処方権を持つpharmacist clinicianが患者と個室で対話し、薬物治療の最適化を主体的に担っている姿を目の当たりにした(図1)。患者側の医療参加意識も高く、双方向的なコミュニケーションが確立されていた点が印象的であった。さらに、ワクチン接種や、血糖値測定のために薬剤師や薬学部生が血液を採取する行為など、日本では実施できない業務を担っていることから、職能範囲の違いを具体的に認識した(図2)。
一方で、医療保険制度やPharmacy Benefit Managers (PBMs)の影響により薬剤選択が左右される構造は非常に複雑であり、医療へのアクセスが必ずしも平等ではない現実も学んだ。薬剤師は臨床能力に加え、制度を理解した上で治療提案を行うことが求められている。
本研修を通じ、日本の薬学教育において参考となる点として、実務実習時間のさらなる充実、多職種連携教育の体系化、テクニシャン制度の活用による薬剤師業務の高度化が挙げられる。一方、日本の国民皆保険制度は医療アクセスの平等性という点で大きな強みを持つと考える。米国の制度と比較することで、日本の医療体制の価値も改めて認識することができた。
本研修で得られた知見を今後の研究および教育活動に還元し、日本の薬学教育および医療の発展に貢献できる人材へと成長していきたい。









