活動成果

2021.08.18

活動成果

【報告】熊本大学 「日本におけるワクチンによる予防医学を学ぶ」

【日程】
2021年8月18日(水)~2021年8月26日(木)、9月30日(木)

【研修先】
熊本大学(薬学部・医学部・医学部保健学科・大学病院)、KMバイオロジクス株式会社

【参加者】
熊本大学生:5名、教員:2名

【概要】
21世紀は予防医学の時代といわれ、ワクチンや抗菌薬などにより感染症は激減している。日本での予防接種は勧奨接種であり、ワクチン接種は個人の選択が尊重されている。しかし、日本では健康被害という副反応の問題に社会的関心が集まり、先進諸国と比較して新たなワクチン導入に対して前向きではない現状があった。本研修では、子宮頸がん予防のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを例として、日本におけるワクチンによる予防医学について医療従事者、患者、研究者、ワクチン開発企業、行政職、薬害被害者の観点から多角的に学び、日本のワクチンによる予防医学の課題について深堀した。最初に、薬学部にて、感染症およびワクチン開発の歴史について学んだ。次に、医学部・大学病院にて、子宮頸がんおよび治療について学んだ。また、子宮頸がんのがんサバイバーの方とHPVワクチンに関する意見交換を行った。オンラインにてHPVワクチンを開発した製薬会社の方からHPVワクチンの開発状況、副作用の発生状況について学んだ。また、医学部にてHPVワクチンの安全性に関する研究について学んだ。KMバイオロジクス株式会社にて、業務の概要およびワクチン開発の流れについて学んだ。薬害被害について、薬害被害者の講話を聴講し、意見交換を行った。熊本県の行政関係者の方から、熊本県におけるがん対策およびHPVワクチン接種に関する行政側の体制について学んだ。オンラインにてケンブリッジ大学の先生から海外のHPVワクチンの接種状況について学んだ。最後に、研修成果発表会を実施した。

【実施した感想】
日本におけるワクチン開発の現状だけでなく、ワクチンに関する課題についてHPVワクチンを例に具体的に学ぶことができた。医療系学部に所属する教員としては、治療する側、開発する側の面から考えがちであるが、がんサバイバー、そして薬害被害者のお気持ちを直接、お伺いし、薬害を防ぐ、起こさない社会の実現には何が必要であるのか改めて考えさせられた。予防薬としてのワクチン接種は個人の選択で実施するべきであるが、個人の選択とするためには、ワクチンの効果、副反応に関する正しい知識を提供できる場の環境整備、そして医薬品副作用被害救済制度のさらなる充実が必須であると思った。本研修にて、日本におけるワクチン開発の状況、ワクチン接種の課題をHPVワクチンを通して学べたことは大変貴重な機会であった。

【参加した感想】
日本では、1994年予防接種法が改正され義務から干渉へ、集団から個別へと個人の意思決定を尊重するように方針転換したが、家庭の経済状況や定期接種のワクチンに関する適正な情報の欠如により、接種率の低下を招いた。そのため、日本ではワクチン接種推進に向けて、対象者への周知、医療機関への予防接種による副反応疑いの報告の適切な実施の周知を行い、対象者がワクチンのリスクとベネフィットを正しく知った上で円滑に予防接種が行われる環境づくりが進められていることを知ることができた。HPVワクチンにより副反応が起きることは事実ではあるが、重篤な副反応である自己免疫疾患が抗原、アジュバンドによるものなのか、否定的な研究結果が出されており、自己免疫疾患がHPVワクチンに特化して起きる副反応ではないことを学ぶことができた。ワクチンに関する適切な情報提供の拡充だけでなく、副反応の原因究明に関する研究、報道のあり方、救済制度の充実が今後、重要であると思った。本研修に参加して、個人的に印象に残ったことは、がんサバイバー、薬害被害者の方が他人から想像すれば辛いであろうご自身の体験を貴重な体験と位置づけて、病気、薬害被害を乗り越えたからこその自分の言葉の重みをポジティブにとらえていらっしゃったことである。また、薬害被害の認定のきっかけが、薬剤師が薬害被害を起こした医薬品の使用に違和感を覚え、薬剤師個人が記録していた使用簿であったことが印象深かった。自身も将来、薬剤師として臨床の現場に立ちたいと考えているが、日々生まれる小さな違和感・疑問を流さずに、勇気をもって疑問を突き詰められる薬剤師になりたいと思う。

薬学部での対面講義

産婦人科外来見学

KMバイオロジクス訪問

海外からのオンライン講義