活動成果

2021.10.27

活動成果

【報告】 長崎大学 International Teaching Certificate Programの受講に基づくカリキュラムプランニングワークショップの開催

【日程】
2021年10月27日~2022年3月10日

【研修先】
ニューメキシコ大学(オンライン)

【参加者】
長崎大学、熊本大学、大阪大学 各大学生 各4名 合計12名、教員 12名(うち6名はITCPとワークショップ参加者)

【概要】
わが国において臨床薬剤師の役割はまだ流動的なところが多い上、薬学教育は個々の教員の能力や臨床経験に依存している部分が大きく、系統だった人材育成が行われているとは言い難い。一方、アメリカ合衆国ニューメキシコ大学(UNMCOP)では、臨床薬剤師を養成するための教育システムが確立している。今回のプロジェクトでは、UNMCOPが提供するInternational Teaching Certificate Program(ITPC)を大阪大学、長崎大学、熊本大学の教員が受講し、アメリカの先進的な臨床薬学教育指導法を学ぶことで教員の臨床教育能力を高めた。さらに、大学間合同の教員・学生によるカリキュラムプランニングワークショップを開催し、学びの共有化と学生の臨床能力の向上を図った。

【実施した感想】
ITCPに参加した教員より、非常に有益で満足しているとの報告を受け、実施した甲斐があったと感じている。また、今回、学生を交えてカリキュラムプランニングについて議論するという新たな試みも行った。ディスカッションでは、3つの大学混成チームに分かれて議論を行ったが、いずれのグループにおいても活発に議論がなされており、成果発表の内容からしても非常に有意義なプログラムだったように思う。

【参加学生の感想】
①  今回UNMCOPの武田先生による講義を受講し、どのようなことを目標としているのか/そのためにどのような動詞を使って授業を設定するのかというような視点で授業を見ることができるようになりました。これは実際にシラバスを参照したり授業を受けたりする際に、自分が努力すべき方向が分かりやすいので学生にとっても役立ちそうだと思いました。
Team-Based Learning(TBL)体験は、少人数で話し合うため発言しやすく、他の人の意見を聞くことで自分の知識不足を感じたり、新たな考え方を得たりすることができたので有意義な経験だったと思います。後半にフィードバックがあったので、間違った解釈のまま授業が終わらず、他グループのディスカッション内容を共有できました。
勉強内容によってインプット重視・アウトプット重視それぞれの講義スタイルがあると思いますが、今回の経験をもとに自分が知識を定着させたい時はどちらのスタイルが良いのかという視点で考え、アウトプットが大事だなと思った時は、周りの友達と今回のようなTBLを行ってみたいと思います。

【参加教員の感想】
① これまで講義を担当した経験がない自分にとっては全てが新鮮で、貴重な経験となりました。特に、教育・学習理論を学修することで、ニーズに応じたゴールと学習目標の設定、Need to knowとNice to knowをニーズに応じて分類することの重要性を理解することができました。武田先生、Bleske先生の講義を聴講すると、UNMCOPでは学生を主体とした授業設計、指導が積極的に行われていると感じました。自分が講義を担当する際には、コアカリキュラムの内容をカバーすることに重点を置いた教員本位の講義ではなく、学生を主体とした授業設計を意識して講義を行いたいと強く思いました。また、講義でActive Learningを体験することで、Passive Learningのメリット・デメリットを理解することができました。自分が担当する予定の基礎科目ではどうしてもPassive Learningが主体となるが、学習内容の知識の定着を促すためにActive Learningを積極的に活用して授業を行いたいと考えています。最後に、本プログラムを企画、ご支援いただいた長崎大学、大阪大学、UNMCOPの先生方に深く感謝申し上げます。
② 本プログラムへの参加を通して、米国における教育・学習理論をはじめ、系統的な授業指導計画および授業計画を学ぶことができ、本邦の薬学教育との違いを改めて感じることができ大変勉強になりました。また、各種課題を通してアクティブラーニングや DI の作成など実際に自分自身が体験する機会を得たことで、学生に対する効果をより実感できたことは大変貴重な体験であったと思います。今後は、本プログラムで得た知識や経験を活かし、高度先導的薬剤師育成に関わる一人として自分自身の教育能力の向上に努めて行きたいと思う。
③ 決して楽なプログラムではありませんでしたが、オンラインで海外のプログラムを受講することができ、とても良い機会が与えられたことに感謝しています。シラバス作成から講義用資料の作成、講義の進め方まで、論理的に構成された教育プログラムになっていて、大変有意義であり、今後の教育活動において活用してきたいと思いました。特に、英文シラバスを作成する際の英単語(動詞)について、習得段階に応じた単語の使い方を学ぶことができ、大変ためになりました。
本プログラムとは別に、長崎大学主催の企画「大学間合同の教員・学生によるカリキュラムプランニングワークショップ(オンライン)」(2022年3月10日開催)においては、学生からの講義に対する率直な意見を聴くことができ、講義を準備する上で今後参考にしていきたいと思いました。
最後に、本プログラムを紹介していただいた先生、講義を含め様々な準備をしていただいた皆様方に心からお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
④ UNMCOPが提供するITCPが2021年10月下旬~2021年2月に計8回実施され、長崎大学・熊本大学・大阪大学から各2名(計6名)の教員が参加しました。英語と日本語で実施されたZoomを用いたオンライン講義を2週に一度受講し、次回の講義までに講義内容に関連する数種類の課題に各自取り組み、WEBシステムに提出し、次回の講義時に各自もしくは代表者の提出課題について総評する形で受講生全員にフィードバックされるというサイクルで講義は実施されました。講義プログラムは、教授法(①教育・学習理論②学習目標の立て方と書き方・授業計画の作成③筆記試験問題の作成方法④授業指導計画⑤授業計画)と臨床薬学教育(⑥医薬品情報教育⑦薬学的ケアプランの立案方法、SOAPノートの書き方等⑧処方箋持参患者・一般用医薬品購入者への薬学的ケアプランの立案方法と指導法)から構成された内容でした。また、ITCP受講後に開催されたカリキュラムプランニングオンラインワークショップには、ITCP受講教員と長崎大学・熊本大学・大阪大学の学生(各大学4名、計12名)が参加し、①受講教員がプログラム中に実施した片頭痛を題材としたTBL形式の講義を学生が体験、②スモールグループディスカッション形式で授業設計やカリキュラムプランニング等について自由討論することで、学生や他の参加教員の方々と意見交換し、教育プランニングについて考察する機会となりました。
⑤ 薬学臨床教育に関するプログラムであったため、臨床的な知識を必要とする場面が多く、自分の専門が基礎系であるためにこれらの分野に関する知識が不十分であることを痛感しました。一方で、薬剤処方に関する臨床シナリオの準備等これまでにまったく経験がなかったことを実施する機会を持つことができました。
 アクティブラーニング型授業に関する時間配分や人数調整など、授業計画を立てる際の参考となる知識を得ることができました。
 TBL による課題解決には新たな気づきがあり、今後のアクティブラーニング型授業の実施の際には積極的に取り入れていきたいと思いました。
 今回のプログラムにおいて課される課題が比較的多く、やりこなしていくことがやや大変でしたが、その分、新たな技能・知識を得ることができたのではないかと思います。
⑥ 計8回の講義のうち、前半では教授法の基礎を、後半では臨床薬学に特化した内容について受講しました。基礎では、まず教授法の理論を学び、適切な学習目的を設定することの重要性(特に動詞の選択)、問題の作成法、様々なアクティブラーニングの手法、講義におけるコンテンツの配分時間などについて学びました。特にTBLの体験受講では、アクティブラーニングの有効性を実感した。臨床薬学に関する内容(ケアプラン、SOAP、カウンセリングなど)は、普段、臨床から離れているため、ついていくのがやや大変でしたが、基礎の先生についてもこのような臨床薬学特有のコンテンツを知っておく必要があると感じました。
ワークショップでは、学生を交えながら活発な議論がなされ、特にTBLについて、低学年には適さないのではないかと指摘を受け、気づきがありました。
このような素晴らしい取り組みを是非、他の教員にも受講していただきたいと思いました。

ITCP・受講の様子