

【報告】 長崎大学 ニューメキシコ大学短期研修プログラム
2025.03.04
【日程】 2025年2月14日(金)~2月23日(日)
【研修先】アメリカ合衆国ニューメキシコ州 ニューメキシコ大学
【プログラム・研修等の内容】
本プログラムは
1、海外での臨床薬剤師の活躍を⾒学し、⽇本との差異を体験することで、⾼度先導的薬剤師の養成に資すること
2、英語によるコミュニケーション能⼒、異⽂化に基づく研究・教育の多様性を理解する能⼒、⾃ら進んで討議に取り組む主体的な態度などを⾝に着けることにより、総合的で実践的な英語能⼒を養うことを⽬的として実施しているもので、今回で5 回⽬の実施となった。
研修の内容はニューメキシコ⼤学薬学部における講義の聴講や演習への参加、学部⻑との⾯談、薬剤師およびPharmacist Clinician の役割に関するセミナー聴講、ペインセンターでの業務⾒学、UNM 病院薬剤部⾒学、地域の薬局⾒学、双⽅向の研究紹介、Project ECHO(多職種協働オンラインカンファ)への参加、A-Fib screening event の体験、キャンパスツアー、毒性管理センター訪問などであった。
参加学⽣は、ニューメキシコ州における地域の特性や保険制度などの医療事情を背景とした薬剤師の役割を⼗分理解していた。また、オンラインを活⽤した医療・教育システム先進的な取り組みなどを通じて、⽇⽶の薬学教育や薬剤師の職能の差異を体験した。
【実施した感想】
担当いただいた先⽣⽅や講義を⾒学させてくださった先⽣⽅はみなとても親切で、学⽣に対し質問が無いかなど積極的に声をかけてくれていた。
参加学⽣も積極的に質問しコミュニケーションを取ろうという姿勢とともに⾃⾝の興味がある部分をしっかり学ぼうとする様⼦が⾒て取れた。
私⾃⾝が第1 回ITCP 受講・修了者であり、学⽣とともに研修に参加したことで現地での様々な形式での講義⽅法を⾒学することで、ITCP にて学んだ内容の復習に繋がるとともに理解が深まり、国内での講義実施の際に役⽴つ情報を多く学べたと感じる。
【参加した感想】
➀「①医療制度の違い」について、⽶国では薬剤師が処⽅権をもつ州が存在しますが、⽶国では⽇本での診療所にあたるような医療施設・サービスが不⾜しており、患者さんが健康問題を⾝近に相談する場として薬局や薬剤師にその役割が与えられているように感じました。実際に、特にニューメキシコ州では⼀般の薬剤師教育に加えてさらなる技能や知識を持ったPharmacist Clinician が慢性疾患の管理や疾患の予防の分野で、患者さんの相談に乗り、薬を処⽅するなど積極的に関わっている様⼦が⾒られました。⽇本でも医療の局在化や医師の働き⽅改⾰による医療リソースの不⾜が課題となっていますが、育成・認定のシステムを作ることで、より患者さんに寄り添った医療ができるのではないかと感じました。また、⽇本では当たり前に⾏われている在宅医療や⼀包化などのサービスが⽶国では⼀般的でないこと、服薬指導料などの調剤以外のサービスに対して報酬を⽀払うシステムが⽶国では存在しないことなどが分かり、⽇本の医療保険制度の
良い⾯についても改めて実感しました。
「②薬剤師育成システムの違い」については、教員と学⽣が⾼度な職能を持った薬剤師の育成という共通の⽬標を持ち、それに向けて共に積極的に取り組んでいる様⼦が印象的でした。それぞれの授業には臨床に基づいた達成すべき⽬標が明確に設定されており、その⽬標達成に向けてより実践型の授業が⾏われているように感じました。例えば、統計の授業では統計⼿法とその違いについて学ぶだけでなく、病院のレジデントの⽅が実際の臨床試験などの論⽂を紹介し、それについて研究の⽴て⽅や評価の仕⽅、
統計⼿法が最適化どうか議論するような授業がありました。さらに、1 年時からセメスター毎にOSCE と呼ばれる実技試験があり、知識として得た内容をアウトプットする機会が多いように感じました。このような授業の⽅が、臨床現場で必要な「考える⼒」を育みやすいのではないかと感じまし
た。共通の⽬的の下、最適な⽅法を模索するということは薬学教育に限らず他の授業や、研究室の運営などにも取り⼊れることができるのではないかと感じました。
➁研修で印象に残った点は主に以下のとおりである。⼀点⽬は、より実践的な薬学教育である。実務実習を基本的に22 週間しか⾏わない⽇本と⽐較して⽶国ではIPPE, APPE と呼ばれる2 種類の実習を4 年間にわたり計1500〜2000 時間ほど⾏い、臨床に根差した薬学教育が⾏われていることに驚いた。また、普段の講義でも臨床に即した内容を扱い、学⽣間で話し合い症例について考えることに焦点を置いた講義であることを知り⽇本の薬学⽣にも必要な⼒であると感じた。⼆点⽬は、pharmacist clinician の存在とその役割についてである。⽶国ではClinician と呼ばれる、薬剤師のさらに上の役職があり、処⽅や予防接種の施⾏など医師に近い役割を果たすことができる薬剤師の医療への貢献度の⾼さに驚いた。三点⽬は、医療へのアクセスの難しさとこれによる国⺠の医療への意識の両国の違いについてである。⽶国は⾼額な医療費や保険の制限により病院へのアクセスが難しいことから国⺠のセルフメディケーションへの関⼼が⾼く、だからこそOTC の
普及や患者の医療への主体性が⾼いことが分かり、両国の医療にそれぞれ利点と⽋点があることが明らかとなり興味深かった。
➂まず、アメリカと⽇本の学⽣の授業や実習に対する姿勢の違いに驚かされました。⽇本では授業中に学⽣が積極的に質問することはあまり⾒られませんが、アメリカでは多くの学⽣が質問をしたり、⾃分の考えを述べたりしていました。その姿勢は、⽇本でもぜひ取り⼊れるべきだと感じました。次に、⼤学の設備の充実度にも強く印象を受けました。アメリカの実習室には、患者の状態をリアルに再現できる⾼度なマネキンが備えられており、図書館には各臓器や組織を分解できる⼈体模型が⽤意されていました。これらの設備の充実ぶりが特に印象に残りました。また、⽇本とアメリカの保険制度の違いを学び、それに伴う地域医療機関の役割や位置づけの違いについても理解を深めることができ、とても興味深かったです。