【報告】熊本大学 一般社団法人メディポリス医学研究所メディポリス国際陽子線治療センター・薬局研修
2024.04.17
【日程】2024年3月7日(木)~8日(金)
【研修先】一般社団法人メディポリス医学研究所メディポリス国際陽子線治療センター・薬局研修
【参加者】学生15名、講師4名、教職員1名
【プログラム研修等の内容】
医療の革新的な進歩により、多様な新規がん治療法が開発され、がん患者が様々な治療戦略の中か ら最適な治療法を選択できる時代になりつつある。本研修では、薬剤師の観点から最新のがん治療の動向・現状を把握し、個々の患者に最適ながん治療を実施するための知識を習得することを目的とし、がん治療における最先端の陽子線治療を実施している「メディポリス国際陽子線治療センター」のご協力のもと、下記の通り研修を実施した。
【講演会】
・荻野尚 先生(センター長):センターの概要説明・陽子線治療の原理
・湯之前清和 先生(事務局長):センターにおける薬剤師の役割
・持留隆伸 先生(センター薬剤科):薬剤師によるキャリアパス
(先輩薬剤師の立場から参加学生との意見交換会)
【施設見学】
・陽子線照射回転ガントリー治療室・患者処置室での陽子線治療デモ
・患者専用宿泊施設紹介(メディカルリゾート【HOTELフリージア】)
【てらわき薬局城西・薬局見学】
・寺脇大先生による薬局見学、近未来の薬剤師像についての意見交換
【参加した感想】
荻野センター長の講演では、がんに関する基本の知識、治療法、各がんに関する特徴、陽子線とX線の違い・利点・仕組みについて学んだ。今回の講演でがんと癌はことなり、がんとは、癌・肉腫・血液のがんを示すこと、X線と陽子線は、RBEは1.1であり、ほとんど同じである一方で局所制御率が大きく異なり、X線は29-36%、陽子線は85.7%であり、この理由は不明であるが、この点が大きな利点につながり、体への負担が少なく、副作用が少なくなることが分かった。湯之前事務局長の講演、持留さんの講演では、薬剤師として患者のための取り組みについて学んだ。取り組みとして陽子線治療(頭顎部がん)において口腔粘膜炎症への対応や、造影剤による副作用に対する対応などを行っていた。放射線科のみという特徴から口腔ケアのため医科歯科会との連携を行ったり、口腔ケアに関するポスターの設置を行ったり、造影剤による副作用の過去との変化からウォーターサーバーの設置を行ったりと薬剤師として薬を扱うだけでなく様々な面から問題解決を行っていることがわかった。薬について詳しいだけでなく、患者さんが困っている問題点を見つけ、解決する力も持ち合わせことも重要であることがよく分かった。また、患者さんとのコミュニケーションも重要であると感じた。てらわき薬局城西は、機械を導入・薬局の外装などを工夫していた。シロップ・錠剤・粉薬は機械を導入し、バーコードで管理することで薬の間違いをなくし、時間も1/3にまで短縮することができていた。加えてこれらのことにより処方箋の監査に時間をかけることができるようになっていた。24h受け取りシステムもあり、服薬指導、会計が終わればいつでも薬を受け取ることができるため待ち時間の有効活用ができるなど患者さんが少しでも利用しやすくなっていた。今まで見てきた薬局とは全く違う設備になっており、これからの薬局はこのような形に徐々に変わっていくのかと感じた。また。機械化することで人を最小限にするわけではなく、今まであまりできなかったところに力を入れるという方向にしている点が機械化するうえでも重要なことであるように感じた。
メディポリス国際陽子線治療センターで、講演や実際の施設見学を通して陽子線治療について学んだ。陽子線治療はがん治療の可能性を広げるとして期待されており、腫瘍への効果が高い、適応の制限が少ない、機能を保存できるなどのメリットがあるほか、計画にしたがって治療が行えるため、仕事や趣味と両立しやすいということがわかった。また、メディポリス国際陽子線治療センターはリゾート滞在型陽子線がん治療ということで、ただ単に治療を行うのではなく、滞在中にゴルフや釣りをしたり大自然の中を観光したりでき、深刻な気持ちを和らげることができるという点で国内のみならず海外の患者からも選ばれているということを知った。実際ホテルに滞在してみて、窓からの眺めのよさや食事の美味しさ、温泉などの楽しめる施設、そしてスタッフの方々のホスピタリティに感動し、私自身もがんの治療を行うなら指宿を選びたいという気持ちになった。また、患者だと思われる男性が廊下で声をかけてくれたが、本当に明るくリラックスした様子だったので、リゾート一体型の治療施設というのがQOLの向上に貢献していることを改めて感じた。また、頭頚部がんの陽子線治療における口腔ケアを医科歯科連携によって改善したという湯之前事務局長のお話も興味深かった。チーム医療、多職種連携、地域包括ケアの重要性を改めて学んだ。てらわき薬局での研修では、薬を集めるという部分に関して自動化が進んでおり、時間は従来の約1/3程度にまで短縮されているということを伺った。これにより、薬剤師は処方そのものに対してより注意を向けることができるようになり、その薬が本当にその患者に必要なのかなど、考える時間が生まれる。また、薬の取り間違えなどを減らし、安全性を向上させられる。そのほかとして、てらわき薬局では機械の導入により夜間処方せん受付が可能になっているということに関心を持った。バスの時間の都合や、薬を取り寄せるためにかかる待ち時間などにあわせられるため、利用者もいると伺った。このような最新の取り組みがあることを知れて、非常に勉強になった。
陽子線治療について、従来のがん治療と異なる点や現状など様々なことを学ぶことができた。手術療法による侵襲や化学療法による副作用、X線照射による他臓器への障害のような身体への負担が少ないため、日常生活での制約がほとんどなく、仕事や趣味をしながら医療を受けられるという非常に画期的な治療法であるということが分かった。メディポリスでは海外や全国の各地からメディカルツーリズムとして非常に多くの患者が集まっているということを聞いたが、現状では陽子線治療はまだ知名度が低く、疾患によっては手術療法と同等の治療実績があることを認知していない医師もいるため、セカンドオピニオンで情報を得ることの重要性を感じたとともに、私自身も今回の研修を通して学んだことを周囲に伝え、陽子線治療をがん治療の選択肢の一つとして広めていくことが必要であると考えた。そして陽子線は様々ながんの治療に用いられているが、特に印象に残ったのが乳がん治療である。従来の切るがん治療とは違い、専用の固定具や装置を用いることで術前の形質を維持できるという話を聞き、今後更に陽子線治療の需要が高まることを実感した。またメディポリスで働く薬剤師の体験を聞いて、薬剤師は薬に関することだけでなく、病院内の課題を発見し他職種とも連携して問題解決を行うなど、患者のQOL向上のために多岐にわたって活躍していることが分かった。2日目のてらわき薬局の見学では、カフェのようなおしゃな外観がとても印象的であったが、患者や患者家族が薬局内で落ち着いて過ごせるようにという目的で工夫が施されていることを知った。また薬局内では最新の機械を導入したことで24時間薬の受け取りやOTC薬の購入が可能になったという話や、機械とコンピューターを用いて薬が分類・整理されているため、薬剤師が薬を集める手間がなくなり、その分処方薬に間違いがないか確認する時間や患者とのコミュニケーションの時間に費やせるようになったことで、安全性の向上にも繋がったという話を聞いて、薬局の目覚ましい進歩を実感したとともに、今後このような薬局が増えていくとよいなと強く感じた。
講演会を通して、メディポリス国際陽子線治療センターにて行われている陽子線治療や、そこで働いている薬剤師の方がどのような仕事をしているかについて学んだ。陽子線治療について私はあまり知らなかったが、がん病巣のみを破壊して正常細胞への影響を最小限にすることができることや、治療中でも痛みや熱など何も感じることはないこと、体への負担が少ないため、仕事や趣味を楽しみながら治療をすることができるなど、とても素晴らしい治療法だと思った。これまでに陽子線治療をうけられて、今健康に暮らしているという症例が多く、陽子線治療をうけられて、顔にあった大きな腫瘍が治療後にはきれいになくなっている写真を見て、陽子線治療が画期的な方法だと感じた。また、センター内を見学して、陽子線治療には巨大な機械が使われていることや、停電や災害時への備え、実際に治療が行われている場所がどのようなところなのかを知ることができた。治療を受ける患者さんが泊まるホテルは、豪華で景色も良く、温泉や砂風呂までついているなど、とても快適に過ごせる施設だと思った。現在保険適用されるがんが拡大しているので、これから陽子線治療を受けることで、治すことができるがんが増えて欲しいと思った。また、私や身近な人ががんになったときに、陽子線治療をすすめたいと思った。センターで働いている薬剤師の話を聞いて、仕事の幅が広いと思った。多職種で連携したり、運用見直しをしたりすることで、治療により起こる様々な問題を解決していく姿勢や行動力がとてもすごいと思った。患者さんがより快適に過ごせるよう、時には薬剤師の業務とは関係のないこともしていることを知り、私も将来親身に寄り添って患者さんをサポートできるようになりたいと思った。
薬局見学では、機械化することで薬の銘柄を間違えることがなくなり、安全性が向上したことで、薬剤師は処方箋の監査に集中できるので、とても良いと思いました。機械化されても薬剤師が必要なくなるというわけではなく、薬に対してより深い知識が必要になるという話が印象的でした。また、外観も素敵だったので、親しみやすく先進的な薬局だと思いました。
萩野センター長の講演では、陽子線治療の詳細について学んだ。陽子線治療は副作用の心配の大きい腫瘍にも効果的であること、手術などが難しい癌種にも適用できることなどを知った。前立腺がんに関しては、手術と変わらない治療効果を得られており、陽子線治療の可能性の大きさを感じた。湯之前事務局長のお話では患者の副作用から学ぶ。施設内の見学ではホテル事業から陽子線治療に拡大した背景や、リゾート滞在型治療を行うに当たり指宿の土地の特性をどう生かしているかなどを学んだ。私が印象的だったのは指宿をハワイに例えた説明で、とてもユニークで面白いな感じた。温泉、自然などゆったりとできる環境が充分に整った施設だと強く感じた。また、陽子センターの見学ではとても大きな機械に圧倒された。普段では決して見ることのできないような機械を間近で見ることができとてもいい経験だったと感じる。また、陽子線治療は患者さんはただ寝ているだけで治療が行えるので、患者さんの負担も考えるとすごく魅力的な治療だなと、改めて感じることもできた。持留さんの講演では、先輩薬剤師さんがどのように活躍しているかを知ることができた。自分は薬剤師免許を持ったら薬剤師として働くというのがメジャーでそのほかの道というのをあまり考えたことがなかったが、持留さんは免許取得から20年ほどたってやっと免許を使うときが来たといわれていて、そんな道もあるのだと自分の視野を広げられた。また、持留さん、湯之前さんのどちらともすごくポジティブな考え方をお持ちなのがとても印象に残っている。私は物事をネガティブに考え弱音をすぐに口に出しがちだと思う。でもお二方の話を聞くとネガティブ思考は自分にとってもったいないのではないかと感じた。どんな時も物事を前向きに捉えていきたいなと感じた。自分も将来、今までの経験は無駄ではなくすべていい経験だったと胸を張って言える生き方をしたいなと強く感じた。てらわき薬局の見学では、薬局の最先端を見ているようで驚きばかりだった。薬を探すという薬剤師以外の業務の短縮化を行うことで、処方監査という薬剤師にしかできない仕事に集中できるのは、薬剤師側にとっても患者さん側にとってもすばらしい環境だと思った。
メディポリス国際陽子線治療センターはリゾート滞在型陽子線がん治療施設である。陽子線はX線に比べてエネルギーを病変に確実に集中できる治療法であり、がん病変に多くの線量を照射しつつ、周囲の正常組織への影響を軽減できる体に優しい治療法である。例えば、乳がんは術後に放射線照射をしないと再発率が上昇するため、ここでX線を照射すると乳がんの再発率を下げることができても5〜10年後に心筋炎や肺線維症などの重篤な疾患に罹患するリスクが高くなってしまう。しかし、陽子線照射を行うことで他の組織への影響を抑えることができる。陽子線治療は、治療時の痛みがほとんどなく、副作用の心配が少ない。また治療時間は1日1回10〜30分程度であり、基本的に入院の必要がないため、QOLの維持ができるというメリットを持つ。しかし、まだ保険適用になっていないがんが多い、胃や大腸などの消化器がん・複数のリンパ節に転移のあるがん・血液がんには適応できないというデメリットも持つ。 この施設は大自然の中にあり、温泉、ゴルフ、グラウンド、ジムなども完備されているため、リフレッシュしながら治療ができる心にも優しい治療施設である。 先輩薬剤師である持留さんの講演では「人生は使う言葉によって作られる」「チャレンジすることで世界が広がる」ということを学んだ。ポジティブな言葉を使って前向きに色々なことにチャレンジすることで、できる仕事が増えていく。てらわき薬局では、機械の導入により調剤の自動化が進んでいた。機械化することで薬の取り間違えを防止できたり、できた時間を対人業務に回したり、薬を夜に受け取ることができるようになったりしている。最新の薬局を見学することができ、いい経験になった。
3/7、8 の 2 日間、鹿児島で行われた高度先導的薬剤師養成プログラムに参加した。初日は、指宿市にあるメディポリス国際陽子線治療センターにて研修を受けた。世界唯一のリゾート滞在型陽子線がん治療施設であり、がん治療の中でも放射線治療の一種である「陽子線」を利用している。センター長である荻野先生の講演では、陽子線治療の特徴や過去の治療結果などをご説明いただいた。今まで陽子線治療についてほとんど知らなかったが、X 線治療と同程度の治療効果をもちながら、安全性が非常に高いことを学び、新たながん治療としての可能性を強く感じた。次に湯之前先生の講演では、陽子線治療に対して薬剤師目線での取り組みを教えていただいた。副作用をどのように抑えるか、さらには患者により良い生活を送っていただくために何ができるかなど、ホスピタリティに溢れていると感じた。その後施設を見学し、治療室や回転ガントリー、シンクロトロンなど貴重なものを見ることができた。2 日目は、朝はメディポリス国際陽子線治療センターにて、薬剤師の持留先生による講演を受けた。薬剤師として何ができるか、さらには日々の心構えなど、熱く語っていただいた。その後鹿児島市内に移動し、てらわき薬局城西にて薬局内を見学させていただいた。自身が知っている薬局ではなく、機械化が進んでおり、また 24 時間薬の受け取りが可能であるなど、薬局も時代に沿って進化していることを学んだ。2 日間で多くの貴重な体験をすることができた。今回学んだことや感じたことを大切にし、日々の生活に活かしていきたい。
がんは大きく分けて「癌」「「肉腫」「血液のがん」の三つに分けられる。がん細胞は免疫機構により排除できないために増殖してしまう。自覚症状が出てくるのは癌細胞が1〜3cmの大きさの時である。癌の治療法は二種を組み合わせることが主流である。具体的には陽子線、放射線、手術である。今回見学したメディポリスは陽子線を使用した治療施設である。陽子線は放射線の一種であり、放射線治療のメリットとして腫瘍効果が大きいこと、人体への影響が小さいこと、治療後のQOLが良いことが挙げられる。一方でデメリットとしては晩期放射線の障害がある。陽子線治療はこのようなデメリットを改善しつつメリットも兼ね備えた治療法となっている。放射線治療のデメリットを改善するために腫瘍にピンポイントに照射できるようにしたことで皮膚の影響を小さくした。このことで患者の予後が少しばかり改善された。メディポリスに所属している薬剤師の湯之前さんが行なったことに医科歯科連携がある。陽子線治療をはじめとするがんの治療には口腔内膜炎がひどく起こることで肺炎や嚥下障害を引き起こしているという報告がある。これらの炎症や障害がひどくなると治療を中断してしまうこともある。具体的には治療前のかかりつけの歯科医師から引き継ぎ治療中は指宿市内の歯科医にかかり、治療後は元のかかりつけの歯科医師に戻るという流れである。医科歯科連携によって医師看護師は口腔内膜炎が改善していると感じている。がんの治療には検査の一環で造影剤を使用することが多い。しかし、造影剤には副作用が多いと報告されている。このことを改善するために造影剤投与プロセスの改善を行なった。具体的には「飲料水の関与」「ステロイドの前処置」といったものである。飲料水はウォーターサーバーの有無によって変化することがモニタリングの結果判明した。がん患者の中には造影剤を使用することのできない造影剤アレルギーの患者が一定数いる。そのような患者には造影剤投与直前にステロイドを投与する。このステロイド前投与によって有害事象発生率は38%から0%まで抑えることができるようになった。このような有害事象の対策をとっても完璧に抑え込むことは不可能である。このような場合にはエピペンを使用することが方法の一つで考えられている。メディポリスの薬剤師は一般的な薬剤師業務とは他に行なっている業務が多く存在している
(センター長荻野先生)陽子線治療の概要やメディポリス国際陽子線治療センターの特徴、治療例についてご講義いただいた。陽子線治療の大きな特徴は身体への負担が少なく、生活への支障も小さく済むことであると教えていただいた。がんの治療というと副作用がしんどい、仕事を辞めなければならない、というイメージを持っている人が多い中、このような治療があることがもっと広まってほしいと思った。しかし、陽子線発生のための機械の大きさやメンテナンスのために多額の資金が必要となること、治療を受けられる施設が限られること、まだ認知度が低いことなど課題はたくさんあると感じた。
(湯之前先生)メディポリス国際陽子線治療センターで薬剤師としての業務内外で行われた取り組みについて、ご講義いただいた。お話を聞く中で、患者さんに対する姿勢に感銘を受けた。患者さんのニーズを聞き、寄り添うためにはどのような仕組みが必要か、どこに働きかける必要があるのか等を考えて行動に移す実行力がすごいと感じた。また、どこまでが薬剤師の仕事なのかという区切りをつけて考えるのではなく、患者さんのために自分の立場で何をできるか考える姿勢が大切だと感じた。
(薬剤部 持留先生)先生のキャリアや今まで薬剤部で行った提案、取り組みについて、ご講義いただいた。これからがん治療のサポートとして漢方を推奨していきたいというお話があり、自分の研究と重なる部分があったので、大変興味を持った。半夏瀉心湯、人参養栄湯、六君子湯、牛車腎気丸、芍薬甘草湯などのエビデンスが集まりつつある漢方から使用を推奨し、不要な薬剤を減らすことができればと考えているとのことだった。メディポリスには抗がん剤治療を行っている患者さんもたくさんいらっしゃるので、漢方の有用性が高いのではないかと感じた。
メディポリス国際陽子線治療センターでは、陽子線を用いたがん治療を行っている。特徴として腫瘍の制御率と正常組織障害の発症率の差を用いて放射線物理学の観点から線量を調節することで正常組織へのダメージを減らし、腫瘍を潰していくことが可能である。放射線療法との違いとして放射線誘発性のがんが無いことが大きな違いである。また、陽子線治療の利点として計画通りに治療が行え、スケジュール通りに完遂できる。がん種の実績として統計部がんでは副作用の晩期障害を最初にすることが出来、肝細胞がんでは、大きさに関係なく90%の局所制御率を誇っている。膵臓がんでは80%以上が手術不能であるが、化学療法併用陽子線治療では生存期間が2年以上に延長している。今後の課題として胃がんなどでは、貫通して空いてしまうため行えないため、実施するために線量の調整や保護するものの作成などが考えられる。固形がんのみの治療法であるため、技術の介入により更なる発展が見込まれる。薬剤師のメディポリスでの介入として湯之前先生のお話をお聞きし、口腔がんの場合、陽子線が口腔粘膜に当たり、口腔粘膜炎を発症し、痛みが伴う。そこで患者QOL維持のため、エピシルを導入するために医科歯科連携の促進を薬剤師が主体となり、取り組むことでエピシル導入後、口腔粘膜炎の発症を軽減させ、患者QOLの向上が見られた。また、造影剤の副作用発生状況を手掛かりとして副作用軽減のため飲水をしっかりすることが求められ、患者様に飲水していただくためにウォーターサーバーの設置を行い、実際に副作用を減らすことが出来た。持留先生のお話では栄養サポートチームを作ることでメディポリスに付加価値を作ることが出来、医師、看護師、栄養士と距離が近い分コミュニケーションをとることが出来、患者さんのことを詳しく知ることができると理解できた。薬剤師が医療現場で考えて行動に移すことで医療をよりよくしていくことが出来ると肌で感じた。てらわき薬局では、機械化が進んでおり、銘柄などの人為的なミスを減らすことで安全に患者さんのもとへ薬を届けることができるとおっしゃっており、機械を導入することで時間効率も導入前に比べ、1/3程度まで減少しており、患者さんに素早く、安全に届けることが出来ることが分かった。今までは薬を集めるのに時間を割くことで患者さんと接する時間が足りなかったがそこが短くなることで患者さんと向き合うことができると分かった。
従来のがん治療で用いられているX線治療と比べて、陽子線はがん部位に集中して照射でき、ほかの器官や組織に与える影響が少ないことから、がん治療における新たな選択肢となっていることがわかりました。また、陽子線治療を行うにあたって、口腔粘膜炎が課題となっていますが、口腔ケアを充実させるために、周囲の歯医者さんと連携して口腔ケアを行い、エピシルという薬剤を用いながら治療を継続させる取り組みを行っていることが分かりました。また、造影剤投与による副作用の発生を軽減させるための取り組みを行っており、これらの取り組みは薬剤師発信で行われたものでした。今回伺ったセンターは、ほかの病院とは異なり、放射線科のみとなっていますが、このような特徴的なセンターであるからこその配慮するべき点などがあり、そこに注目してサービスを行っているところがすごいと感じました。薬剤師には治療を決定する権利はありませんが、積極的に問題点を改善できるような取り組みを行っていけるのだと強く感じました。1日目の日程が終わったあと、ホテルを見学させていただきました。自然に囲まれて食事も配慮されており、スポーツも楽しめる充実した施設となっており、がん治療を行いながらリフレッシュできる素晴らしい環境だと思いました。その後、鹿児島市にあるてらわき薬局さんに伺い、見学させていただきました。建物が高級チョコレートやさんのような見た目をしておりました。小児科の門前薬局でしたが、これは子供向けに行われたものではなく、親御さんが快適な空間になるように内装や外装にこだわったとのことでした。また、調剤室はほとんど機械化されており、かなり狭い空間でも成り立っていました。人的エラーを確実に減らし、安全性を向上させるために、機械化を行ったとのことでしたが、実際、処方された薬剤を集める手間が減ったことで、疑義照会にフォーカスすることができているとのことでした。安全性の向上はもちろんですが、患者さんが快適に過ごすことができる環境づくりも重要であるということを痛感しました。
3月7日から3月8日にかけて実施された「一般社団法人メディポリス医学研究所 メディポリス国際陽子線治療センター研修」に参加した。一つ目の講演では、荻野センター長から陽子線治療についてご説明いただいた。ここでは、陽子線治療はがん細胞を狙い撃ちできる特徴をもち、従来の放射線治療と比較して、人体への影響が少ないこと、機能と形態保存ができ患者のQOLを維持できること、晩期有害事象が少ないこと、放射線誘発がんの発症リスクが低いといったメリットがあることを学んだ。二つ目の湯之前事務局長のご講演では、陽子線治療による口腔粘膜炎に対する口腔ケアとして、医科歯科連携を結び、エピシルを導入した実績をご説明いただいた。導入するにあたり、エピシルの勉強会を実施し、薬剤の使用法を標準化することで、口腔ケアの向上のみならず、医師や看護師の口腔ケアに対する不安の解消に繋がったことを学んだ。続いて、大松様による案内で治療室やその裏側の装置、またホテルの設備を見学した。がんに対する根本的かつ身体にやさしいがん治療の実践を通して、国内外のがん患者さんのQOL(生活の質)向上に大きく寄与することを目的とした、リゾート滞在型陽子線治療の理念を学んだ。2日目には三つ目の講義として薬剤師の持留先生にセンターの価値・利益・働きやすさの向上のための取り組みについてご説明いただいた。従来の仕組みに捉われない、入院患者への薬剤師指導業務の点数化や作用機序の異なる薬剤の導入などの例をお聞きした。最後に、てらわき薬局城西へ移動して寺脇代表取締役に薬局内を案内していただいた。最新の薬剤入庫払出システム「ROWA VMAX130」、「ROWA VMOTION」、さらには「PICK UP TERMINAL」を揃え、安全性と利便性の向上に努めた新しい薬局像を知った。今回の研修を通して、どの先生も「患者さんのため」を第一に考えていること、そして問題発見能力と行動力の高さに感銘を受け、非常に多くの刺激を受けた。
2024年3月7日(木)と8日(金)に、一般社団法人メディポリス医学研究所によるメディポリス国際陽子線治療センター研修に参加した。7日(木)はセンター見学・研修会に参加した。まず、荻野センター長によるご講演では、がん治療についての基礎知識や、センターが実施する最先端の陽子線治療についてご教授いただいた。陽子線治療は手術や化学療法など他治療に比べて、計画性・安全性・QOLの点で優れていることが理解できた。費用に関しても、前立腺がんや治療が難しい頭頸部の腫瘍など、複数で公的医療保険が適用されており、数千人の患者さんを治療されてきたと知った。メディポリスは、治療が1回数十分程度のリゾート滞在型がん治療施設と知り、今後も需要が高まっていくだろうと考えた。続いて、湯之前事務局長のご講演では、メディポリスで働く薬剤師として実施されてきた改革についてご説明いただいた。陽子線治療患者さんの口腔粘膜炎に対する保険適応薬についての医科歯科連携や口腔ケア運用全体の見直しを行ったことや、陽子線治療で使用する造影剤の副作用の予防・対応策を考案したことについて教えていただいた。薬剤師としてチーム医療に携わることや、地域包括ケア、多職種連携の重要性を改めて認識することができた。新日本科学の前臨床CRO事業やTR事業、社会的利益創出事業についても拝聴した。センター見学では、通常は見ることができない陽子線治療室や回転ガントリーを拝見させていただき、貴重な体験となった。8日(金)はメディポリスの薬剤師・持留さんのご講演と、てらわき薬局城西の見学に参加した。持留さんのご講演では、メディポリスで実施された、患者さんや副作用に合わせた薬剤導入についてご教授いただいた。メディポリスでは患者さんのことを第一に考えた薬物療法が行われていることを学んだ。見学した薬局では、薬剤のバーコード化など多くが機械管理されていた。安全で効率的であるとともに、患者さんの健康のためには、薬剤師による監査や服薬指導が重要であることを再認識することができた。
本研修にて、メディポリス国際陽子線治療センターと薬局での学びを通じて、最先端の医療とその周辺の業務、今後の薬局薬剤師の役割について深く理解することができました。陽子線治療の特徴・治療実績について学び、保険適用となる症例が増えていることを知りました。特に放射線治療に比べ、より局所的な治療が可能である陽子線治療では眼球などの周辺組織を傷つけることなく治療が可能であり、その利点が活きた過去の症例をお聞きすることができて見聞が広がりました。また、ガントリーやシンクロトロンの見学はとても良い経験となりました。更に、陽子線治療において口腔内ケアや治療薬の選択など、治療にあたっての薬剤師の役割について詳しく学ぶことができました。また交通の便やリゾート滞在型の治療施設であることから、薬剤師業務を超えて患者さんに対するホスピタリティーを提供していることも知り感銘を受けました。薬局見学では機械の導入によって薬剤師の本来の仕事に重点を置くことができる仕事環境と、機械化が進む中でのこれからの薬局薬剤師像の移り変わりについて知ることができました。これまで小児科の門前薬局においては小児が過ごしやすいような明るい薬局にするべきだと固定観念を持っていました。しかし顧客は親御さんであり、親御さんにとって快適な環境となるように設定されている薬局のコンセプトに衝撃を受けました。さらに機械化によって計数調剤の時間短縮、調剤過誤のリスク削減、心理的ストレスの軽減など、設備投資費以上の多くのメリットを享受できることを知りました。そして何よりも薬剤師が処方監査などの本来の業務により時間をかけられる仕事環境が素晴らしいと思いました。今回このように見識を深めることができ、とても意義ある研修に参加させていただいたことにとても感謝しています。
まず始めに、メディポリスの荻野センター長から、がんの治療についてと陽子線についての講演をして頂いた。陽子線は放射線治療でデメリットとなっていた晩期障害や放射線誘発がんというものの発生頻度を少なくした治療法であるということがわかった。さらに、様々ながん種において化学療法不応となったものや手術不能であると判断された患者さんに対してとても効果を示しているということを知ることが出来た。保険適応となるがん種も増えてきており。これまで治療法がないと言われて諦めていた患者さんにおいても希望を見出せる治療法となっている。しかし、まだ陽子線治療の認知度は低いため、患者さん側からセカンドオピニオンを受けてもらったり、自分たちで治療法を調べたりしてもらわなければならない。次に、湯之前事務局長からメディポリス国際陽子線センターにおいて薬剤師として取り組んでこられたことについてお話を伺った。頭頚部がんの陽子線治療においては口腔粘膜炎がたびたび問題となる。以前は口腔粘膜炎に関しては口腔衛生に努めるようにという看護師からの指導程度しか行っておらず、炎症を生じた口腔の痛みから食事をとることが困難になり体重減少や感染症の罹患などが起こってしまっていた。そこで、口腔衛生を保ち、栄養状態を良くするような取り組みを行った。取り組みを行う上で、歯科医師と協力をするため、指宿市の薬剤師会を通じて歯科医師会と連絡を取り、医科歯科連携を行うことに成功した。治療前、治療中、治療後を通じて歯科医で患者さんの口腔衛生を向上させることで口腔粘膜炎の発生頻度を抑制し、栄養状態が低下することを抑えることが出来た。施設内の見学では、陽子線治療を実際に行う部屋や、陽子線を発生させる装置を見学することが出来た。陽子線治療を受ける患者さんは治療中、台の上に寝ているだけで、部屋に入室してから退出するまで約20分で治療が終了する。実際に陽子線を照射している時間は1分-1分半ほどだ。陽子線を出す装置は360°回転するようになっており、患者さんそれぞれに適した方向から当てることが出来る。その装置は170tもあるほど巨大な物でビルの3階分にも相当する広い部屋にあった。陽子線を発生させている装置は直径が約7mのサイズで置かれており、1秒間に地球を4周するほどの速さにまで加速され、発生させた陽子線は3つの治療部屋へと飛ばされている。機器のメンテナンスは毎日夜に行われており、三菱電機のスタッフがいつでも対応できるように常駐している。2日目の朝には薬剤師として働かれている持留さんの講演をお聞きした。持留さんは企業で働いた経験を経て現在薬剤師をされている。薬剤師業務を通して見えてきた課題に対して、様々な薬の情報を集めて先生に提案を行うことで、患者さんが持病も含めてより良い治療が行える薬剤部づくりに取り組んでおられる。てらわき薬局の見学では様々な機械を導入した薬局の業務をみることができた。出来る部分は機械化することで速く、正確に調剤出来るシステム作りがされていた。薬剤師は対人業務に専念するということで、より確かな知識を持った薬剤師が求められているということを感じた。