【報告】富山大学 南カリフォルニア大学(USC)のサマープログラム2021への参加
2021.07.19
【日程】
2021年7月19日~2021年7月30日
【研修先】
USC薬学部(オンライン参加型)
【参加者】
富山大学 学生 7名
【概要】
USC薬学部が2021年度に企画した独自のオンラインによる国際交流プログラム(参考資料 #1)に参加した。Zoomを用いたオンライン参加型プログラムであり、世界各国からの参加学生とともに英語で高度薬剤師になるためのグループワークを体験した。参加学生は、4つの専門コース(医薬品開発、臨床治療、レギュラトリーサイエンス、或いは健康経済学)から1分野を選択し、各テーマの国際プロジェクトチーム(計18チーム)に振り分けられ、日本時間の11:30(現地時間:前日19:30)より毎日3時間のグループワークセッションに参加し (参考資料 #2, 3)、以下の観点で計12枚のスライド資料作成(参考資料 #4)を行い、最終日に英語での発表を行った。なお、プログラム参加者は、日本、中国、韓国、台湾、マレーシア、インド、パキスタン、サウジアラビア、スペインの学生から構成された。
1. タイトルおよびアウトライン
2. 科学的背景
3. 臨床利用
4. 承認・規制に関連すること
5. 経済学的な関連事項
6. 臨床と経済学に関する考察
7. 承認・規制と科学的考察
8. 臨床と承認・規制に関する考察
9. 経済学および科学的考察
10. 臨床および科学的考察
11. 経済および承認・規制に関する考察
12. 結論
【実施した感想】
USCの現地スタッフが各プロジェクトチームのファシリテーターとして関与することで、オンラインでの参加形式ではありながらも臨場感を感じさせる内容であった。英語によるコミュニケーションを通じて各国の医療事情や薬学臨床教育の違いなど、国際的な視野を広げるのに有効な機会であったと考えられる。とくにコロナ禍で制限のある中、英語学修に対する意欲を高める貴重な機会となり、修了証を受領した参加学生ら(参考資料 #5)の感想も我々の期待した以上に好評であった。今後とも、国内外の学生間で積極的なコミュニュケーションをとることで、切磋琢磨していくことが期待され、薬学教育的な波及効果も大きいものであったと考えられる。
【参加学生の感想】
①本プログラムにおいて最も画期的であると感じた事として、多角的な薬剤評価を学べたことが挙げられる。対象医薬品についての評価を四分野に分けて行い、また分野ごとの評価 を更に比較することは、医薬品の強みとなる側面や効果的な使用方法の理解を進める上で効果的だった。単純な効果発現の強弱に留まらず、効果発現に至るまでに必要な費用等からも比較を行うことでより患者負担を考えた評価が行えたと考える。また薬物投与から回復に至るまでの時間的な負担を考慮に入れた考え方を持つ学生が多いと感じた。効率良く投薬が可能であることも、金銭的側面から日本より重視されることが分かった。
② Summer programを通して、science、clinical、economics、regulatoryといった様々な観点から薬をとらえる必要があり、どの分野も創薬から市場に出すまでに大切であることがわかった。また、今回USC summer programに参加し、様々な国の人が英語でコミュニケーションをとる中で、十分に内容を理解できない自分が惜けなく悔しかった。今後このような機会があれば、英語を理解できないことによるコミュニケーションの障壁を取り払い、積極的にprogramに参加できるよう、自身の英語スキルをもっと高めたいと強く実感できた。
③私は英語が嫌いでしたが、ディスカッションに参加し、しつかり話したいときはチャッ卜で参加し、とプログラムが始まる前までは想像していなかったくらい馴染むことができたと思います。良いチームでした。最終日はお別れが寂しく感じました。異国に知り合い が出来たと自慢しました。彼らともっと英語で話せたらいいなと思いました。2週間で自分の心は少し変わりました。「話すのが億劫」から「なんとか話したい」へ。このような機会を頂けて感謝しています。ありがとうございました。私は英語が少し好きになりました。
④現地に行くことはできない代わりに、海外のアプリケーションの使い方、チャットでのコミュニケーションなどのスキルが身に付き、国際学会や留学等で役に立つような今後につながる研修となった。チームメイトとも研修時間以外でも連絡をとれるほど仲を深めることができ、高い志を持つ仲間がいることを再確認できた。コロナが収束したら会いに行きたいと思う。私の後輩には、来年のISSP 参加をぜひ進めたいと思う。そして、今後も毎年ISSPが開催されるとともに、富山大学からの参加者が増えることを願う。
⑤本プログラムでは自身の英語力、とりわけ語粟の少なさを実感し、さらにオンライン会議であるが故の機器トラブルや不明瞭な音声などにより話し手が何を言っているか聞き取れない場面も多々あり、相手方には多大な迷惑をかけてしまった。次にこのようなものに参加するときは、十分な英会 話能力を身につけた後であることが望ましい。 一方、医薬品の調査にあたり、私がこれまで利用したことのなかったDrugBank OnlineやMicromedex等のオンラインデータベースに触れることができた点はよかったと思う。本プログラムは各国の時差を考慮した比較的都合のよい時間帯に、オンライン会議システムにより実施することで、一堂に会することができるという面白い試みであった。
⑥オンラインでの参加にも関わらず、臨場感を感じさせる内容であった。グループのメンバーが調べたことについて討議を行う際も、その内容をある程度理解し、意見を出すことができた。具体的には、pharmaceutical scienceの観点で薬を考えたときにどのような工夫や限界、改善点があるのかについての討議が印象的であった。この時間は自身の考えを加える必要があったのでとても大変だった。また、発表スライドを作成するにあたって内容をより深めることができた。このように国内外の学生間で積極的なコミュニュケーションをとる機会は、英語学習だけでなく、薬学教育的な効果も大きいと感じた。
⑦本プログラムを通し、海外における希少疾病に対する認識を学ぶことができた。今回検討の対象となった医薬品の多くは希少疾病に適応のある医薬品であり、特殊な使用方法を持つものが多かった。国民皆保険にも繋がるものであるが、多くの場合薬物治療を行う上で対象薬以外の治療方法を検討する旨が記載されていた。治療対象者の少ない疾患であっても、より詳細な治療プロトコールが作製されているためと考えられる。アメリカ等の保険が少ない土地において、情報が集まりにくい希少疾病にしっかりとしたガイドラインが形成できているのは、医薬連携の構築が成されているためと感じた。