【報告】東北大学 宮城県石巻地区被災地医療研修

2019.08.27

日程:
2019年8月27日(火)

研修先:
東北大学薬学部、石巻地区(石巻赤十字病院、大川小学校、女川地域医療センター、日和山公園)

参加者:
学生18名(台北医学大学留学生2名含む) 職員6名 計24名

概要:
【目的】災害時医療および災害時における地域の医薬品供給体制や医療救護体制を学び薬剤師等の医療従事者の役割を理解する。石巻赤十字病院では特に東日本大震災の現状とその対応について学び、災害時医療について過去の教訓をもとに理解を深める。地域での医療連携体制、多職種間での患者情報共有を学ぶ。
【日程】
8:30 東北大学薬学部
 オリエンテーション(富岡佳久・塚本宏樹)
8:45 東北大学薬学部 出発
 自己紹介、災害医療の講義(名倉弘哲)
10:20 石巻赤十字病院
 石巻地区コーディネーターの紹介・挨拶(佐賀利英、丹野佳郎)
11:00~11:30
大川小学校
 被災地の見学と説明(丹野佳郎)
12:00~12:40
石巻赤十字病院(災害研修センター講堂、昼食)
 東日本大震災当時の状況と災害対策の講義・説明(佐賀利英)
13:20~13:45
女川町地域医療センター
 東日本大震災当時の状況と災害対策の説明・質疑(齋藤充)
14:20~14:30
日和山公園
 石巻市の現状と震災当時の説明(丹野佳郎)
 質疑・感想(車中)
14:50 石巻赤十字病院 到着
15:00 石巻赤十字病院 出発
 事務連絡(塚本宏樹)
16:30 JR仙台駅 
17:00 東北大学薬学部

実施した感想:(抜粋)
東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻地区を訪問し、現地の中核病院である石巻赤十字病院や女川町地域医療センターにおける災害時の状況や薬剤師を始めとした医療従事者の災害時における対応を直接学ぶ機会を得られたことは貴重な経験であった。震災当時は、医療設備やインフラだけでなく、患者情報等の電子情報について想定以上の被災を受けました。そのような被災した状況の中で、地域住民のケアにお薬手帳が有用であること、不足する医薬品供給体制の整備や全国各地から派遣される災害医療チームの統括など、災害時のチーム医療において薬剤師に求められる役割を学ぶことができた。
被災地を直接訪問し、大川小学校跡や日和山公園から石巻地区を概観し、震災の爪痕はいまだ残っていること、震災の経験を活かした復興活動は道半ばであることを実感できた。この経験は、医療人としてだけでなく、社会人として大きな経験であると改めて感じることができた。
現在、全国あらゆる場所で大規模な自然災害が発生する可能性があります。今回の被災地医療研修の経験が、災害対応を念頭にした常日頃の準備、そして薬剤師として災害時チーム医療に貢献するための心がまえ等、将来の指導的人材として期待される参加学生諸君が成長するための機会になることを願います。
最後に、本研修にご協力いただきました石巻赤十字病院 佐賀利英 先生、石巻薬剤師会 丹野佳郎 先生、女川町地域医療センター 斎藤充 先生に心よりお礼申し上げます。

参加者の感想:
①まず、はじめに感じたことはその被害がいかに大きかったかであった。震災直後、テレビで何度も家や車が流される映像を見たが、あまりのことで、現実味を持つことが難しかった。大川小学校を訪れ、自分より何倍も高いところにある水面の跡や折れ曲がった鉄骨を見たり、今は何も無い小学校のまわりに住宅地が広がっていたことを聞いたりすることで、その被害の大きさを肌で感じることができた。
次に二つの病院で共通の話として出た「多職種連携」についても印象深かった。赤十字病院では、日ごろの訓練などから職種間の壁を無くすことで、緊急時にチームとして動くことができると話していた。医療センターでも、地震や津波の被害を受けた後、そこにいた、様々な職種の人たちと連携をとりながら問題解決に向かったと話していた。また、震災後変わった点として、職種間の壁が無くなったことを挙げていた。災害などの緊急の場面では、多くの人手が必要となってくるし、医師だけ、薬剤師だけでは当然対処しきれない。多職種連携の重要性が分かった。

②【行ってみて初めて身近な出来事と思えた】災害医療に興味があり発災から今まで本を読んだり映像を見たり積極的に情報収集していたつもりでもそれはあくまでも2次元の出来事でした。今回生まれて初めて東北の空気に触れ、祈りの心を持ちながらその土地を踏んで360°見渡し、実際に経験された方のお話を瞳を合わせて聞くことで「震災後8年」という年月が文字面ではなく具体的なイメージを持って浮かび上がるようになりました。今度ニュースで見かけた時には自分のすぐ隣の出来事としてしっかり捉えられる気がします。齋藤先生の「女川は流されたのではない、生まれ変わるんだ」という言葉が印象的で、次はまだ東北に行ったことのない友達を連れてまた訪れたいと思います。
【最後に】コーディネートして下さった先生方、事務の方々本当にありがとうございました。私は災害拠点病院に勤める予定で救護班に入ることも志望しているのですが、今回見た景色、伺ったお話、感じた思いを深く心に留め、災害時に薬剤師として何ができるか考えて続けていきます。

③ この研修を通じて私は、災害発生時にどのような対応をしていくべきかに関して様々なことを考えました。
まず大切なのは、迅速な対応を行う事です。大川小学校の人的被害が大きくなってしまった理由として、想定外の津波におそわれ早い段階で避難計画を立てられなかったことが挙げられます。日頃から様々な災害を想定し計画を立てておくことと、それに基づいた速やかな対応が高い防災意識と安全の確保につながると考えました。
また医療職としては、職種にとらわれずに、1つのチームのように垣根を越えた職間連携を行うことの重要性を学びました。平時から連携は必須ですが、災害時には特に、医療組織の中でどのように自分が貢献すべきかを常に考えながら対応しなければなりません。石巻赤十字病院で、毎年災害医療の訓練を行っていると伺い、常にこうした想定をして業務連携を図っているというのは災害医療に関する適切な対応なのだと実感しました。
さらに患者さんに寄り添う姿勢を常に持ち続けることの大切さを感じました。薬が不足している方のために巡回を行ったり、臨時の薬局を開設して服薬指導をおこなったりするなど、患者さん視点に立った医療の大切さを体感しました。
災害時には普段に増して、困っていたり助けを必要としたりする方が多くいらっしゃいます。自分にできることを考えながら、医療職の一員として活動する姿勢を持つことの大切さを改めて感じました。

④今回感じたこととして、大きく2つ挙げられる。1つ目は、被災地において、薬剤師がその専門性を活かして活躍できる場は考えていた以上に多かったということである。災害が起きた時はけがをした人の救助がメインという印象が強く、患者に直接触れることができない薬剤師はどういう活動をしているのか想像が難しかったが、お薬手帳を失くした人や自分が服用している薬を把握していない人も多く、そういう方から話を聞くことによって、その方の薬物治療を支えていくことは薬剤師だからこそできることだと感じた。また、女川地域医療センターで先生が「大震災での活動を通して、薬剤師等、医療者の関係が深まった」とおっしゃっていたのが印象に残っており、それはとても良いことだと感じたが、病院で薬剤師が活躍できる場や雰囲気が今後もっと増えて欲しいと思った。赤十字病院で見たビデオからは、日頃からの災害時に対する訓練が非常に大切であるということが強く伝わってきた。2つ目は、自分もいつ被災者になるかわからないということである。大川小学校や海岸沿いを見学して、直接見ても本当に津波がそこまで襲ってきた事実が信じられなかった。今回見た光景は本当に目に焼き付いていて、忘れられないと思う。災害は忘れた頃にやってくると言うが、自分も被災者になる可能性があるという意識を持ち、その時に薬学を学んだ者として何か行動を起こせたらと思った。

⑤大川小学校についての丹野さんのお話で、大川小学校自体が一次避難場所となっており、そこから大人数で別の場所へ移動するのは前もった計画や訓練の経験がなければ困難であることや、降雪の中子供たちを連れて山へ避難するのが危険と考えられたことが原因として重なり、裏山への避難が選択されず、その結果地震から津波到達まで50分あったのにも関わらず多くの尊い命が奪われたという話が非常に印象的で、心が痛みました。当時のまま残された小学校の建物を見学し、津波の悲惨さをまざまざと感じました。
石巻赤十字病院では以前から行われていた大規模で本格的な訓練の成果を生かし、東日本大震災の際に医療従事者が連携し、被災地医療の中心的役割を果たすことができたと知り、普段から非常事態に備えた準備を行っておくことがいかに重要であるかを学びました。
女川町地域医療センターでのお話からは、災害時にチーム医療をしっかり行うためには、普段から他職種と連携し、信頼関係を築き、職種間の壁を低くしておくことが重要であると感じました。
1日という短い時間ではありましたが、初めて訪れた被災地において見たり聞いたりしたことはどれも非常に貴重なお話で、有意義な経験をすることができました。実際に震災を経験された方々のお話を聞き、震災当時の状況を理解するとともに、この教訓を生かしていくことの重要性を感じました。また、普段から災害に対する対応をしっかりと考えておくことがいかに重要であるかということや、チーム医療の大切さ、震災時の医薬品供給体制における薬剤師の果たす役割の大きさを学びました。
将来どのような仕事に携わるにせよ、今回の研修で学んだことを生かしていきたいと思います。

⑥ 大川小学校には初めて訪れたのだが、はっきりと津波の被害が残っている跡地の見学は初めてだったので、津波の被害の悲惨さをかつてないほどに感じた。周辺の道は被災したことが感じられないほど整備されていたので、復興が進んでいることを感じるとともに、大川小学校のような遺構がないと災害に対する意識が弱くなってしまう人も多いのではないかと思った。災害に対しては日頃から意識して備えることが大切なので、今後も被災したときの自分の生活や医療について考え続けていきたい。
 石巻赤十字病院の震災当時の対応について、一部の内容は以前にも説明を受けたことがあった。しかし、実習等を経験して病院についての理解が深まった上で見直すと、改めてその初動が素晴らしく感じられた。すぐに組織を立ち上げて仕事を分担し、それぞれの部署で一人一人が自分の役割を果たすことができるようにするには、事前によく準備してきちんと訓練をしておくしかないのだと思った。

⑦大川小学校の被災については、以前テレビで報道されていたものを見たことはあったが、実際に現場へ行ってみて被災の凄惨さをより感じた。
石巻赤十字病院では震災当時の病院内での災害時医療への移行の様子を見させてもらった。ビデオの中では一人一人がスムーズに行動しており、普段から訓練されているのが感じ取れた。特に指揮を執る人の指示が職員全員に伝えられているところが大切なポイントと感じた。今まで講義等で災害医療の手順などを教えられてはいたが、どれ程の時間で、どれくらいの行動が求められるかは想像できていなかったので、今回ビデオを見て、災害時医療について理解を深められ、さらには、現場の雰囲気までも見ることが出来た。

女川町地域医療センター.JPG

石巻赤十字病院.JPG

日和山公園.JPG