【報告】岐阜薬科大学 学生自主研修講演会

2019.07.09

日時:2019年7月9日
場所:岐阜薬科大学
参加者:
岐阜薬科大学教員4名、学生33名、職員2名
名古屋市立大学 学生5名
岐阜女子大学教員 1名
題名:ドイツにおける医薬分業とかかりつけ薬剤師
概要:
超高齢化社会に向けて地域包括ケアシステムの中で活躍できる薬剤師教育は喫緊の課題である。一方、ドイツでは医薬分業が1241年に開始されており、すべての薬局がかかりつけ薬局であるなど、日本が参考にするところが多い。そこで、日本出身で、ドイツロッテンブルク市で開局されているセントラルアポテーケの薬剤師アッセンハイマー慶子先生の講演会を企画した。また、日本コミュニティファーマシー協会代表理事である吉岡ゆうこ先生には日本とドイツの薬事行政の違いについて講演していただいた。
スケジュール
13時~14時 講演講演(吉岡ゆうこ先生:日本とドイツの薬事行政の違い)
14時~15時 講演講演(アッセンハイマー慶子先生:
ドイツにおける医薬分業とは~オールかかりつけ薬局の国ドイツ~)
15時10分~16時10分 グループ別による学生のSGD
16時10分~17時10分 各グループの代表による学生の発表
17時10分~17時30分 各講師・教員による講評

実施した感想:
学生は、ドイツに定着しているかかりつけ薬局の現状とそこで活躍する薬剤師の業務、実臨床について学習することができた。先進的な取り組みをしているドイツの実情から、日本の超高齢化社会に向けて地域包括ケアシステムの中で活躍できるようになるための具体的な施策などについてイメージできるようになったと考える。また、教員も、ドイツにおける薬学教育の実情について知ることができ、今後の薬学教育に寄与できると考える。最後に、薬学生へのメッセージとして①薬学は自分と人を助ける生涯役に立つ楽しい学問、②薬学はオールラウンド学問、③薬剤師はいつでも科学者・研究者、④みなさんが日本の医療を変えていってほしい、との言葉をいただいた。
講演会後のSGDでは、岐阜薬科大学の学生と名古屋市立大学の学生が情報交換するとともに、ドイツから学ぶべきことについて話し合うことができた。ドイツのオールかかりつけ薬局を参考にして、自身の目指す薬剤師像や、将来に向けて為すべきことを考えることができた。

参加者の感想:
①ドイツでは、ピッキングマシーンを用いて、日本と比べてはるかに速いスピードで患者さんに薬をお渡しできるようになっている。しかし、日本では、薬局がこの制度を導入しようとしても医師の処方箋から変えていかないといけないうえに、問題となっている残薬問題が加速する可能性もある。ピッキングマシーンを導入するということよりも患者さんにいかに安全に正しく薬をのんでいただくかに尽力するのが大切だと思う。また、ドイツでは24時間薬局が開局されているということで、これはすぐに日本でも取り入れるべきだと思う。日本とドイツでは国民性が全く異なることが根底にあるので、ドイツの制度などをそのまま日本に導入することは困難であるので、日本の実情に合うように改良することが重要だと思う。

②ドイツでは、日本と比較し、優れているところが多くあると感じた。やはり、一番印象的であったのは、ピッキングマシーンを導入していることです。導入することにより、人員を削減することができ、その時間をより薬局に来局した患者との対話に使うことができるので、丁寧な服薬指導などを行うことができるようになり、質の高い医療を提供できると考える。ドイツでは、ピッキングマシーンの導入費が完全に個人持ちであるが、日本だとそれは少し厳しいようにも思えるので国がいくらか補助金を出したりすることで可能になるのではないかと思う。ドイツの薬局システムでよいと思ったところは、薬の流通システムの充実です。流通センターがバランス良く設置されている。日本と比べ特定の会社を優先的に選ばないところ、一つの会社でなんでも揃い、また、注文から配達準備完了まで30分から45分というスピーディなシステムが非常に魅力的であると感じた。
今回、ドイツの薬局システムについて多く学ぶことができた。日本以外の国の考え方の違いで様々な特徴があるが、日本はドイツから学ぶべきことも多くあるのではないかと感じた。

③制度面で言えば、全体的に日本は参考にするべきだと感じた。特に処方箋がすべて決まった形式であるということ、PTA、PKAのような薬剤師の業務を肩代わりできる職種に関して、日本も早急に導入の方向に向かうべきだと感じた。ドイツのように日本の薬剤師も薬剤師にしかできないこと、薬剤師だからできることのために時間を費やすことが患者のためになる。処方箋の規格化に関しては、スキャナーでの取り組みができることを含め作業の効率化、簡略化、ミスを減らせるなどのメリットがあると感じた。PTA、PKAの導入に関しては登録販売者のような現行の制度の改修によって対応が可能なようにも思う。患者に向き合う時間が増え、患者との信頼関係の構築につながる等医療の質の向上につながると思う。ドイツは制度に関してはよいお手本になると感じた。

④ドイツで実際に薬局を開設し、勤務されている先生のお話を伺うことができ、ある程度ドイツの薬剤師、薬局について理解することができた。
日本で言われている、「かかりつけ薬局」や「健康サポート薬局」といった機能がすでに確立されており、地域住民と薬剤師の距離が近く頼りにされている存在であることがわかった。そういった業務を行うことができる理由として、近隣薬局の輪番制による24時間対応や、医薬品卸業者の綿密な配送体制などのインフラ的要因があることもわかった。
日本で全く同じ薬局、ドラッグストアの姿を実現することは難しいと感じたが、目指すべき姿がドイツの薬局なのだと感じた。今回の研修を通して、実際にドイツの薬局を見学したいと感じたと共に、今後薬剤師として働いていく上で生かしていきたいと思う。

⑤非常に有意義な時間でした。一番印象に残っているのは、「国民性の違い」です。日本では十分な説明とアフターフォローがどの分野でも求められますが、ドイツでは一度説明を受けた後は自己責任という考え方のようです。薬をもらって飲まなくてもそれはその人の選択だ、という考え方には驚きました。薬局の在り方として、調剤をほとんど薬剤師はせず、患者と話す時間がほとんどとのことでした。日本でも、調剤の負担は減らす方向に向かっていますが、理想的な姿だと感じました。薬局が病院の付属ではなく、独立して地域に根差していることから、日本でも小さい頃からの教育も含め、薬局側からの地域貢献の姿勢も大切なのだと思いました。今後自分が働いていく中でも積極的に薬局を活用してもらえるような対応がとれるように心がけたいです。

⑥ドイツの健康保険は法定保険とプライベート保険の二元構造で、プライベート保険に加入する場合には収入制限がある。
 ドイツの薬局事情を聞いてもっとも驚いたのは、チェーン薬局がなく、個人が開局できるのは3薬局までということである。開局者自らが薬剤師として働いていないといけないので、地域に根差した薬局経営ができるのだと思った。また、24時間医薬品の供給を行うために、輪番制で夜間も営業を行わねばならないため、薬局内に仮眠室などを設置しなければならない。卸会社の協力(日に4~5回配達、夜間も配達可など)や高速が整備されていることが大きく影響していると思う。
 調剤についてはすべて箱だしであり、機械化が進んでいるようだ。また、一包化は専用の施設が存在し、個々の薬局では対応しない。
 患者自身も自分の健康を管理するという責任感があり、残薬管理という発想がなく、薬局の業務は仕入れから供給までで、その先服薬するかどうかは患者に一任されている。

⑦今回の研修プログラムに参加して、ドイツと日本の薬剤師業務の違いが想像以上にあり驚いた。その中でも、ドイツの薬局は箱出し調剤で患者さんに必ず添付文書を渡すという点が印象的であった。実際、日本の調剤薬局で渡される薬には詳しい説明書がほとんどついておらず、他剤との併用で相互作用が発生するか気になった時はネットで検索して調べることが多い。私は薬学的知識があるためネットで検索して調べ、情報を得て判断することができるが、薬学的知識が全くない患者さんがネット上の膨大なデータの中から適切な情報を見つけ出し判断するのは難しいのではないかと考える。よって、このような患者さん目線で分かりやすい薬の情報を提供しているドイツの体制は見習うべきではないかと思った。

⑧ドイツでは日本と異なり完全な医薬分業システムが出来上がっていること、そして薬剤師の地位、存在が確立されていることを学びました。私はまだ薬局実習前なので、日本での薬局薬剤師の現状を完全には把握できていませんが、今回のお話を伺い、日本と比べてドイツの薬局薬剤師の方が薬局薬剤師として行うべき仕事を全うしている印象を受けました。ドイツでの「かかりつけ薬剤師にシステムが整っていること」「薬局薬剤師がセルフメディケーション事業に大きく貢献していること」、この二点を日本でも実現しようとする動きが医療における薬剤師の地位をより確立するために必要だと感じました。

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