はじめに(事業成果報告)


国立14大学が参画し第2期中期目標期間中に実施した「先導的薬剤師養成に向けた実践的アドバンスト教育プログラムの共同開発」事業においては、医療現場での医薬品適正使用のみならず、創薬や保健衛生など広範な職域において指導的な立場で活躍できる“先導的薬剤師”の養成に向けて、学部教育においては「実践的医療薬学教育プログラム」、「長期課題研究及びアドバンスト教育プログラム」、「SP養成及びPBLチュートリアル教育プログラム」及び「教育評価手法プログラム」、また大学院教育においては「チーム医療・地域医療プログラム」、「最先端創薬研究プログラム」、「高度医療人養成・レギュラトリーサイエンスプログラム」及び「トランスレーショナルリサーチ・臨床試験プログラム」を共同開発し、参画大学において共有・実践した。これにより、各大学の薬学部における高学年教育及び大学院博士課程教育の充実と先導的薬剤師の養成における実質化を図った。

このような学部教育及び大学院教育の充実・実質化は、学部及び大学院のカリキュラムに反映される。2016年(平成28年)に改正が行われ、2017年(平成29年)から施行された三つの方針の策定・公表に関する学校教育法施行規則においては、全ての大学等において、三つの方針(ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッションポリシー)を一貫性あるものとして策定し、公表するものとするとされ、各大学における見直しが求められた。したがって、上記のように学部教育、大学院教育の基軸となるカリキュラムの充実・実質化を図ってきた参画大学においては、それぞれの教育理念や教育研究上の目的に基づき、社会が求める薬学の発展を主導できる優れた薬学人材の育成に向けて、三つの方針のさらなる高度化・実質化を図り、これに沿った高度先導的薬剤師養成に向けた教育研究に取り組んでいる(参照:参画大学の教育理念、教育研究上の目的及び三つの方針については各大学のホームページ等に詳しく記載されている)。

第3期中期目標期間に実施する「高度先導的薬剤師の養成とそのグローカルな活躍を推進するアドバンスト教育研究プログラムの共同開発」事業では、このような優れた薬学人材、すなわち薬学の発展を担うべき“高度先導的薬剤師”を養成し、社会に輩出するために、参画大学を国立14大学から国公立17大学(2021年までに19大学に増加)に広げて、前事業における成果を基盤として、さらに高度かつ実践的な学部、大学院における教育研究プログラムの開発と実施を図った。

本事業で主に取り組んだアドバンスト教育研究プログラムは、
1. 高度医療人キャリア形成教育研究推進プログラム
2. 国際医療薬学教育研究推進プログラム
3. グローバル健康環境教育研究推進プログラム
4. 地域薬学人材養成教育拠点形成プログラム
5. 地域医療教育研究推進プログラム
である。

加えて本事業では、前事業で重点を置いていなかった教育研究プログラムにより育成した高度先導的薬剤師がグローカルに活躍することを支援するためのプログラムの普及と定着化を図った。すなわち、学部や大学院を卒業・修了した薬学人材は高度先導的薬剤師として高度化・多様化する医療に的確かつ主導的に対応するために、常に自らの資質・能力の向上を図る必要がある。そこで、本事業の一環として、卒業者・修了者に対して上記のような資質・能力向上やキャリアの高度化を図るためのアドバンストキャリア形成教育研究プログラムの提供により、その自己能力開発、自己研鑽に対する継続的な支援を図った。このような取組も主に上記5つのプログラムに取り入れ、あるいはそれ以外の教育研究プログラムとして実施したので、報告する。

上記の通り、参画大学は、それぞれの教育理念や教育研究上の目的に基づいて、三つの方針のさらなる高度化・実質化を図り、これに沿った高度先導的薬剤師の養成に取り組んでいる。本事業は、国公立大学の薬学部及び大学院博士課程における基盤的な教育研究プログラムを推進するものである。したがって、参画大学において、本事業の目的と同様の高度先導的薬剤師の養成に向けて、本事業以外の文部科学省等の省庁や学術振興会等の助成事業や、大学独自に物的・人的リソースを活用することによって取り組む教育研究プログラムについても、各大学の裁量に任せて、このような取組の実施に係る規定に反しない範囲で、上記の本事業の5つのアドバンスト教育研究プログラムの一環、あるいは本事業の連携あるいは共同事業として位置づけ、実施することとした。したがって、以下の事業成果報告書においては、このような事業について事業名を明記して、報告を記載している。

前事業の「先導的薬剤師養成に向けた実践的アドバンスト教育プログラムの共同開発」では、参画した国立14大学を4グループに分けて、各グループが先に示した学部高学年教育及び大学院博士課程教育に係るそれぞれ4つの教育研究プログラムの共同開発を分担して行った。一方本事業では、前事業の成果を共通の基盤として、参画大学それぞれの学部や大学院における教育理念、教育研究上の目的、三つのポリシーを尊重し、また教育研究に係る特徴ある物的・人的リソースを活用して、上記 1~5 のプログラムについて担当を決めずに、参画大学全体あるいは他大学との協働を重視して、それぞれ取り組むこととした。これによって、各大学は、上記のような自大学の教育研究活動やその実績、リソースの特徴によって、特定のプログラムについて重点的に取組むことや、独自の教育研究プログラムを展開することを可能とした。このような事業運営によって、自由度が高く発展性のある教育研究プログラム開発と実施、普及・定着化、ひいては“高度先導的薬剤師の養成とそのグローカルな活躍の推進”の実現が期待できる。

以下、第3期中期目標期間(2016年(平成28年)度~2021年(令和3年)度)における本事業の成果について報告する。なお、複数年度にわたって継続的に実施されているプログラムについては、開始年度にとどまらず、実施年度にわたって記載しているものもある。

なお、事業の主幹校である大阪大学において実施したアドバンスト教育研究プログラム等の取組は、事業運営に関わるものもあるので、別途項を設けて報告するものとする。